どうぞ中まで。「ピーニャ、それ」
険しい顔をしたオルティガの声に顔を上げる。
眉を寄せた彼の指差す方に視線を落とすと、手の甲が赤く染まっていた。
「…あれ」
「あれ、じゃないっての!お前そこ、瘡蓋?ずーっと引っ掻いてたんだぞ」
「えー、気付かなかった」
まだできたばかりだった瘡蓋を爪先で剥がしてしまったせいで、じわりと滲んだ血液が広がっていたようだ。
まるで手に穴でも空いたかのような有り様に、ずっと眉を寄せたままのオルティガが自分のポケットから出したハンカチを差し出してくれた。
「ん」
「えっ、いいよ。自分のあるし」
「その手じゃ出せないだろ。ほら!」
引っ掻いていたほうの指先も爪の中まで赤くなっていて、確かにこれでは何かを触ることもできない。
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