……その館、と言うより城は、緑の森の奥深くにあった。
人喰いの魔物が出るから近づくな、と近隣の村の子供達は言い聞かされて育っていたが、彼は信じていなかった。
なぜなら。
少なくともこの100年ほどの間に、実際に件の城に向かって帰らなかった者も、人喰い鬼に喰われたと思しき亡骸も発見された事実はなかったからだ。
興味があるのは、ただ一つ。
その城には何があるのか。なぜ、そのように言い慣わされているのか。
また別の伝承によれば、その城では永遠が手に入ると言う。
殊更に不老不死など興味はないが、学ぶには人の一生はいかにも短い。
もし永遠という時間が得られるのならば、それこそあらゆる森羅万象をしゃぶりつくし、未知の謎を解き明かしたい。
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