冬隣に参る 淡い亜麻色の髪を滑る淀みない鋏の音と、切られた髪が床に落ちる音。
きこえるのは、そのふたつだけ。
あまりの静けさに、淡い亜麻色の髪をもつ青年はふわあと欠伸を洩らした。その拍子に頭が揺れる。
「っ、急に動くな。まあ、ふた目と見られん頭になりたいなら話は別だが」
「う……ごめん」
慌てて背筋を伸ばす青年を咎めるも、海色の双眸は鋏の先をとらえたままだ。改めて仕損じがないことを確認してから、金の髪をもつ青年は再度亜麻色の髪に鋏を入れた。
室内が再び、鋏と髪の落ちる音に支配される。
「それにしても…」
鋏を器用に動かしながら、金髪の青年──ルー・シモンズが静かに問うた。
「何故、俺なんだ?床屋なら街にいくらでもあるだろう」
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