装うオキラス少々急ぎの用がある情報局員がヴェスパー第三隊長兼特殊情報局長官執務室へ入室のサインもそぞろに「失礼します」と入ると、そこには用件を伝えるべき本人、執務机の前に置かれた一対のソファセットに座るオキーフ長官…と、もう一人。
オキーフの腿横に片膝をつき半ば跨るようにして、おおよそ通常ではない近さで向かい合う第四隊長ラスティが居た。そのおおよそ通常ではない光景を目の当たりにした局員が一瞬息を詰めるも「長官、報告が。よろしいでしょうか」と告げれば「ああ」と通常通りの表情の低く冷静なオキーフの声が返ってきて、局員はわずかに安心を覚える。
と同時に第四隊長は大した音もたてず、す、と身を引きオキーフから一歩下がると「どうぞ」と言わんばかりに手の平で示す。その整った笑顔とスマートな所作もまた通常通りで、今の今までとっていた、彼のパブリックイメージを覆すような姿は幻覚かと思わされる。
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