▼さよなら僕の半生、ホタルのひかり
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「今日会えなくなった」
目覚ましよりもはやくに鳴り響いた電話に出れば、電話口の相手はろくな挨拶もなしにそう言った。相澤は起き抜けで未だぼやける思考を頭を振ることでなんとか覚醒させて、カレンダーアプリに登録されていた爆豪の予定を思い返した。遠方への出張は入っていなかったはずだし、事務所に泊まりがけになるような仕事もないと言っていたような気がする。
基本的に爆豪は予定が決まったときに相澤に報告をする。職業柄か、染み付いた学生時代の習慣か、爆豪は少しのことでも相澤にはきちんと報告をくれていた。
カレンダーアプリでシフトの共有はしているけれど、それとは別にこの日は遅番だとか、宿直になったとか、急に休みになったとか、この日は予定があるから会えないとか、そんな事務的な連絡から、今日はなにを食べた、パトロール中こんなことがあった、というような生活の些細なこともメッセージアプリを介して逐一連絡してくれる。
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