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    kiyouefme

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    kiyouefme

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    現パロその1 またダメだった。
     暗い夜道を歩きながらぼんやりとテストの結果を思い返す。もうすぐ受験だと言うのにこの頃の成績は右肩下がり。お母さんの冷たい目を思い出して見せたくないなあ、と心の中でぼやく。
     ぐらりと体が傾くのを感じる。と思うのに上手く体に力が入らない。ああこれは転ぶなあなんて思っていたら何かに受け止められた。
    「おい、大丈夫か!?」
     男の人の声が聞こえる。意識がぼんやりして、大丈夫とか、何でもないとか、そんな簡単な言葉すら出せない。
    「……ア…!」
     ああ、瞼が重い。最後に寝たのいつだっけ。

     気がつくとベンチのようなものに横になっていた。目だけを動かして周りを見る。するとすぐ側に誰かが立っていて、驚いて飛び起きた。その瞬間ぐわんぐわんと大きく揺さぶられるような感覚に襲われた。
    「急に起き上がるな」
     頭を抑えていると声をかけられた。まだはっきりしない意識のまま声をかけてきた誰かの顔を見上げる。長い耳を見るにエレゼン族であろうその人は私に目線を合わせるようにしゃがんだ。
    「道端でいきなり倒れたことは分かるか?」
     そう言われて意識が途切れる前のことを思い出す。確か倒れそうになったところを誰かに支えられた。それがこの人ということなのだろう。
    「はい…」
     返事をしながら落ち着いて見てみると、私が横になっていたのは家の近くの公園のベンチだった。わざわざここまで運んで寝かせてくれたようだ。
    「大丈夫なのか」
    「たぶん、ただの寝不足です」
     思い返せば3日前からほとんど睡眠をとっていない。それがたたって倒れてしまったのだろう。
    「それでも少しくらいは休んでいけ」
     助けてくれたその人はそう言うと私の隣に座った。知らない人の隣というのは居心地が悪くて、立ち上がろうとするが不機嫌そうな視線が向けられる。何度かそれを繰り返して仕方なくそのまま座っていることにした。
     何もせずにぼーっとしているとお腹が空いてくる。そう言えば晩ご飯を食べ損なったんだった。宿題が終わったら食べようと思っていたら授業の時間までに終わらなかったのだ。
     コンビニにでも寄ろうかなと考えているとぐう、とお腹の音が鳴った。恥ずかしくてお腹を抑えるがもう遅い。その人にもしっかり聞こえていたようだ。
    「食うか?」
     そう言って横に置いていたレジ袋を私に差し出す。中にはスナック菓子の袋が何個か見える。またお腹が鳴りそうな気持ちになりながらも首を横に振った。
    「ありがたいんですけど、いただけません」
     知らない人からの物は受け取れない、と思い申し出を断る。至極当然のことだと思うのに、どうしてかその人は私の言葉にとても驚いたような顔を見せた。
    「そうか」
     一言返事をしてその人はレジ袋をまた隣に置いた。
     どうすればいいのか分からず目線をそらすと、公園の時計が目に入る。針はもうすぐ10時になろうという時間を指している。いつもだったらもう家に着く頃だ。これ以上遅くなるとお母さんにどこで道草を食っていたのかと言われてしまう。そう思って急いで立ち上がった。
    「遅くなるといけないのでもう帰りますね。えっと…」
     お礼を言おうとしてまだ名前を聞いていなかったことを思い出す。
    「あの、名前は」
    「エスティニアンだ」
    「私はソフィアです。助けてくださってありがとうございました、エスティニアンさん」
     そう言ってめいいっぱいお辞儀をしてから公園の出口に向かう。公園を出る時にちらりと振り返るとエスティニアンさんと目が合った。何かしなきゃいけない気がしてもう一度ぺこりとだけ頭を下げる。そして今度こそ小走りで家への道を辿った。
     なんで助けてくれたんだろうとか、ろくなお礼もできなかったなとか、思うことはいろいろあったけれど。一番心にひっかかったのはエスティニアンさんの悲しそうな目だった。
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