プニプニの誘惑 家に帰ると、猫又が俺のベッドの上で伸びていた。
安らかな寝息を立て、時おり前足の指がにぎにぎと動いている。
そんな無防備な足先に惹かれ、俺は猫又が本当に眠っていることを確認してからそっと手を伸ばした。
「おお、プニプニ……」
ピンク色の小さな肉球は、想像以上の触り心地だった。
こうして大人しく眠っていればただの猫みたいで愛らしいのに……と益体もないことを考えながらしばらくいじり続けていたら、もふもふの指先から小さくも鋭い爪が現れ、俺の指先を咎めるように引っ掻いた。
「痛って!」
「おかえりなさい、少年」
「……ただいま」
肉球の主が目覚めては仕方がない。
俺はしぶしぶベッドを離れて制服から着替え始めたのだった。
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