何事も始まりは突然で、終わりも突然。目まぐるしく過ぎてゆく時間の流れに置いていかれぬよう必死に追いかけていたら、その時はすでに目の前へと訪れていた。
「……嘘だ」
ぽつりとつぶやく声が、人の少ない放課後の職員室に雫の音を落とす。かろうじて動いた口以外微動だにできないほど、あんずは手渡された紙面から目を離せないまま呆然と立ち尽くした。
「おや、本人から聞いていないんですか? 彼は二年次から変わらず志望しているんですよ」
季節は秋も半ば、あんずが手にしているのは三年生が記入し提出した進路希望調査書。進路指導教諭である椚章臣に呼び出され、これを参考に彼らの卒業後を見据えたサポートおよびプロデュースを頼みたいとのことだった。
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