ほんとのきもち 窓の外はとっぷりと暗い。八時をすぎて、まだ寝るには早いかと寮内をぶらついていたところ、談話室のソファにひと影をみつけた。
見慣れた背中だったから、ジャージのポケットに手をつっこんだまま秋山はぶらぶらと近づいてみる。
ソファに浅く腰かけて、小早川はひとりテーブルに置いたタブレットに見入っていた。音声は切られていて、あたりにほかにひとはいないというのに律儀なことだと感心する。
背中越しにひょいと画面をのぞきこんでみれば、ひとりの選手がロングボールを投げているところだった。何の試合かとながめているうち、山形のユニフォームが大写しになる。
「熱心ですね」
そう言いながら、秋山はソファの肘掛けあたりまでまわりこむ。なんとなし拗ねているような口つきになってしまったから、これはよくないと咳ばらいにまぎらせた。
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