籠鳥檻猿 古い知人から干からびた小さな猿の前脚を譲り受けた。
「猿の手」と呼ばれるそれには三つの願いを叶える事が出来るまじないがかけられており、譲り受けた老夫婦とその息子はまず手始めに家のローンの残債を支払うべく二百ポンドを授けて貰えるよう願ったが、その日は特に何も起こらなかった。
────しかし、この願いは思いも寄らない形で叶えられる事となる。
翌日、息子が勤務中機械に巻き込まれて亡くなり、息子の勤める会社はこの件を公にしないで欲しいという理由で老夫婦に補償金二百ポンドを支払いたいと申し出てきたのだ。
老夫婦は息子を埋葬した後もショックのあまり何が起きたのか分からず、十日経っても老母はすっかり生きる気力を失っていた。
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