その名を呼んだ あ、と思った時にはもう遅かった。
灼けるように熱い感覚が脚に走り、フィンはガクリとその場に座り込む。
呆然と足を見下ろすと、そこからどくどくと血が流れ出ていた。その光景は命そのものが溶け出して消えていくようで、フィンは思わず短く悲鳴を上げる。
遅れて走ってくる激しすぎる痛みに、気絶しそうになるのを何とか堪えた。ズシンと音がして、フィンは恐る恐る顔を上げる。
そこには、フィンにこの怪我を負わせた相手——巨大な森サソリがいた。
課題の薬草を採りに、一人で森に入ったのが間違いだった。深くまで行かないからと、友人に頼らず自分で解決しようとなんてしなければ。
森サソリが、弱った獲物を仕留めようとその鋏を振り上げる。フィンは固く目を瞑り、無意識に呟いた。
1677