牛肉が欲しいと言われたので、出荷も出来ず冷凍庫の肥やしになりそうだった塊肉を分けてやったのが昨日の話だ。生で喰うなよと釘を刺して。
そんで今日、いつもの通りに弁当持参で自称聖域に堕天降臨したら、珍しいにも珍しく、リビング併設のオープンキッチンでちゃんとした鍋を使って何かしら煮込まれているではないか。もしかして飯は不要だったか。訊ねる前にステーキ弁当をぶんどられていた。
どうやらオレが尊大な心で分けてやった肉はあの鍋の中で、弱火でじっくり煮詰められているらしい。生で喰われていないなら何よりというやつで。珍しくも気合いが入っているという事は何かしら意味があるんだろう。まあ、大体の想像はつくが。
「血を分けし我が同胞の来訪が控えている」
想像を裏切らないな、という感想はさておいて。とうとう妹という言葉すらも標準語で言えなくなったかこの男。
「何作ってんだ?」
「貴様には関係ないだろう」
おいコラ、こっちは材料提供してんだよ!