お題『嫉妬』 レストランの個室で、降谷は赤井と食事を楽しんでいた。高層ビルの最上階にあるレストラン、しかも夜景のよく見える窓際の席は、赤井が予約してくれていたものだ。時刻は夜の八時。まだデザートには早い時間である。もう一杯、ウィスキーでも飲もうかと考えていたところで、赤井のスマホが鳴った。
赤井が素早くスマホの画面をタップし、応答する。相手は女性のようだった。相手の話を聞いているうちに、しだいに赤井の眉間に皺が寄っていくのが見える。赤井の口ぶりからするに、どうやら仕事の電話ではなく、飲みの誘いだったらしい。FBIのメンバーで集まって飲み会を開いているようで、赤井を呼ぼうという話になったようだ。
赤井が断りの言葉を告げると、「どうして来れないの」と、甲高い声が聞こえてくる。電話の相手は酔っ払っているようで、声も大きく、降谷の耳にもよく届いた。その声に降谷は聞き覚えがあった。最近来日したFBIのメンバーのひとりだ。降谷の胸の内に、モヤモヤしたものが広がっていく。
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