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    105@海自艦擬人化

    @sanpomichi105

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    105@海自艦擬人化

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    ①と③。生活の細々したことを練習中の新造艦たち。

    #擬人化
    Humanization
    ##本編

    結び目 細長い布を首に掛け、輪っかを作っては潜らせて形作っていく。締めにしゅっと絞って整えたら完成だ。初めて教わった時は一応結べたという程度だったけれど、幾度か繰り返す内に見映えも良くなってきたと思う。シャツ自体も着なれてないからぎこちなさこそあるけれど、鏡に映る姿は昨年の春に見掛けた新卒の人達のようだ。一年が経つのは早い。就役はまだ少し先だけれど春に向けて身仕度の準備も着々と進んでいる。最後に受け取ったばかりの制服に袖を通す。これなら今すぐ艦に乗り込んでも違和感を抱かれないだろう。
    「あ、兄ちゃん制服着てる! ネクタイ上手く結べないから教えてもらおうと思って」
     のしろがガチャリと開けたドアから顔を覗かせ、ちょうど良かったーと笑いながら隣に陣取る。姿見に入るよう半身ずらしてからふと思い出した。それ(パーカー)じゃやり辛いからと予備のシャツをロッカーから出して渡した。
    「なんで新しいやつ? 別に洗う前ので大丈夫だよ。皺付けちゃうし」
     掛けてあるハンガーを横目にして遠慮がちな声に、アイロン当てる練習しないといけないからね。そう苦笑しつつ答えた。それを聞いて先々の出来るようになることの多さに思い至ったのか、少しげんなりした顔をしたのしろを見て笑う。先日までの冷え込みが和らいだ穏やかな午後のある日。
     急流のごとく、慌ただしくも幸せな艤装期間は過ぎていく。大海原はもうすぐそこに。
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    105@海自艦擬人化

    DOODLEかもめ(新幹線)とやはぎ(艦)。セルフクロスオーバーみたいなものです。
    新米の冒険 駅から続く電車通りから外れて海沿いの遊歩道を軽く駆け抜け、公園の端まで来るとそこから人々が憩う様子をふわふわと潮風を浴びながら眺める。この景色は元々は海から見る予定であったけれども、あいにく天候の折り合いが悪くて叶わなかった。それ自体はいまも残念に思っているものの、こうして別の機会にでも自ら赴けるあたり、人の身に意識を宿したことのありがたさを感じる。まだ慣れていないのもあってしばしばバランスを崩してしまうけれど。本体の性質のせいかこの身体でも走るのは好きだ。でもたまにはゆっくり歩くのも良いな、と遊ぶ幼い子供の笑い声や木々のざわめきを耳にしつつ元来た道を戻るべく振り返る。
    「こんにちは!」
     いつからいたのか、視界の手を伸ばせば触れられる距離に子供が立っていて、思わずびくっと身体が跳ねた。やや緊張した面持ちで声を掛けてきた子供は背格好からしてまだ小児料金が適用される年頃に見える。驚いて真っ白になった頭でもそれだけは真っ先に過ってちょっと可笑しくなった。落ち着いて思考を巡らせる。確か出掛ける前に先輩からは「人からは見えないのだから、もし迷ったら呼びなさいね」と言って携帯を持たせてくれたのだけれど。中には見える人もいる、ということなのでしょうか。こんなことなら対策を聞いておくんだったと内心はあたふたとしながら何を言うべきかを考える。
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    105@海自艦擬人化

    DONE祝・118進水日!10周年おめでとう~!
    雨上がりの記憶 不意に目を覚ます。直前まで夢でもみていたのか一瞬、ここはどこだっけと頭をよぎった。薄暗い中で視線を巡らせて、艦の馴染んだベッドであることを確認する。枕元に置いているデジタルの腕時計を手探りで掴み、顔の前でかざすと時刻は〇五二九を示していた。付近のベッドではまだぐっすりと眠っている者が大半のらしく、機械の作動音が低く響いているのを除けばしんと静まっている。
     もう一〇年前、か。
     寝起きの少しぼんやりした頭で今日だなぁと思い出す。時刻と並んで表示されていた日付は八月二二日。かつて海へと滑り降りた日だ。当日朝は普段と違う様子に緊張していたのか、単に暑くて寝苦しかったか、もしくは夢見でも悪かったのか。起きてしばらくの間ぐずぐずと泣いて、立ち会いのしらゆきさんを困らせたような記憶が朧気に残っている。ただ、さすがのベテランと言うべきか、彼の気性ゆえか、あれこれと世話を焼かれている内にすっかり機嫌が治っていだから不思議なものだ。僕では同じように出来ないだろうと思う。艤装中に〝ふゆづき〟の舞鶴配備を知ってからは生まれ故郷とのことでしばらくご無沙汰だけど、と注を入れながらも馴染みの店をいくつか教えてくれたりもした。就役後に訪れると既に閉めているところも多くあったけれど、続いているところの中には自分も気に入って、通っているところもある。出港中ですぐには叶わないけれど帰ったら久しぶりに買いに行くのを楽しみにしていようと思う。
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