おおむね人型をした、柔らかそうな黒毛の生き物が、眼前の何かに真っ赤な槍を突き刺すのを見た。
その瞬間、がたん!と音が響き渡った。急激に心拍数が上がり、体が熱くなる。
やってしまった。ゆっくり顔を上げると、にやにやしたクラスメイトの視線と、うんざりした顔の教師がいた。
授業はそのまま続けられた。ただ、言及するに値しない、自分の羞恥があるだけだった。
ぼくはごまかすように、勢いよく、眠っていた間の板書をノートに書きつけた。
――
「めっちゃがたんってなってたな」
間に1時間、別の授業を挟んでいるのに、わざわざ時間がたっぷり取れる昼休みに、そんな話をする。もうどうでもいいじゃないか。黙って弁当を広げる。視界の端で茶色っぽい髪の毛が揺れる。視界に入ろうとしてきやがる。
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