木漏れ日を拾った。
金木犀の香りは遥か遠く、陽だまりの中に落ちるアネモネは期待と、希望と、夢と。
「あたたかい」
こどものままでいると指切りした忘れ物はぬくもりに消えて。
心に生い茂る小さな森は迷路のよう。
「あたたかい…こわい…こわい…」
ぬくもりはこわい。つめたいのは落ち着く。
離れていくあたたかさは、恐怖。
「春はおそろしいね」
思った。
どうやらお日様はボクが歩む度に近づいてくるらしい。
侵食していく。
じんわり、じわじわ。
歩む印の意味は見いだせないけれど、それでも何かを残してみたいから。
「鏡の向こうに帰ろう」
オオカミ少年はオオカミ少年らしく、自分すらも騙してみせた。
幸福の積もった絨毯を踏みしめて。
こぼれ落ちていく光を全身で吸って、吐き出さないように。
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