白うさぎと桜見団子(真っ赤なお目々のうさぎと団子 前)カムラの里にある茶屋では、いつも明るい声が響いている。
それは茶屋を切り盛りしているヨモギの声であり、名物であるうさ団子を頬張る客の幸せそうな声であり。
だがその日は、いつもと違う声が茶屋前に響き渡っていた。
「いらっしゃいませ、美味しいお茶とうさ団子は如何ですか?」
いつも聞こえる呼び込みの声よりも、もっと低い―けれど通りの良い、優しさを感じる声。
その声に引かれるように茶屋へと足を運ぶ客に、声の主がふわりと笑いかける。
程よく筋肉のついた身体に、纏っているのはこの里で一般的に着用されている作業着。
その上から、ささやかなフリルのついたエプロン……所々にうさぎのモチーフをあしらって、可愛らしい事この上ない。
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