ゆきの滲む、その先でヤグルマの森の奥から大木を打つ音が響く。
音の主はダゲキのアヤム、この辺りに住むダゲキの中では比較的若いポケモンだ。修行の為に一晩中森の最奥で技を試していたが、流石に疲れたのか手を止めて持ち歩いていたヒメリの実を頬張り始める。
「ふぅ……一先ずこれくらいにしておくか」
木の幹を背に座り込んだ、その時だった。少し遠くの草むらが揺れるのが見え、思わず木の実を食べていた口をむぐりと止める。
「……誰だ!」
もしかしたら自分達を狙ったトレーナーかもしれない、と即座に立ち上がり構える。
しかしその心配は要らなかったようだ。
「これって…ユキワラシか……?」
草むらからちょこんと出てきたのは、見たことの無い小さなポケモン。しかし名前だけは知っていた、遠い雪国では有名な生き物なのだと聞いていたからだ。
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