無題(あとでつける)「ずっと待ってたよ」
黒い衝動に飲み込まれるままに任せて、電源が落ちたモニターみたいにブラックアウトした意識の先。
いつもなら血と硝煙と腐りかけの死体の放つ異臭に塗れているはずのそこが、何故かうざったいほどに甘い匂いで溢れていた。
しかし、薄目を開くとやはり見慣れた光景が飛び込んできた。見えるものと感じる匂いに差がありすぎて、いよいよ嗅覚がバカになったのだろう。
視覚の次は味覚。その次は嗅覚。
次第に失われていく五感に、いつか来るだろう崩壊の足音を聞いた気がして、気分が良くなる。なんなら歌だって歌えそうだ。
堆く積もった髑髏と腐りかけの肉塊の上で、気が触れたみたいに笑いながら、空から落ちてくる血のように赤い雨を浴びる。
4618