とある少女の物語*誕生と出会い*
気が付いた時には既に僕は存在していた。
まるで眠りから覚めた様に、瞼の先と中との区別を認識するのに
時間はかかったが、今この場所に僕が確かに実現しているという感覚は確かに感じた。
ただ、たった今座り込んでいるこの世界のように、
記憶だけは真っ白だった。
そう、白。
真っ白。
床も、天井も、壁も無い様な。
あるのは、ただの、白。
真っ白な紙に、黒い点を描く。
黒い点は僕。
それ以外に何もない。
耳が痛くなるほど音もない世界。
聞こえるのは僕の呼吸と鼓動。
同じ景色の中、目を閉じることだけで暗闇を感じることができた。
何故ここにいて、何をしているのかすらわからなかったが、
ただ唯一自分の名前だけは知っていた。
いつまでその場に座りこんでいただろう。
3140