凍土主従のとある一幕 危なっかしい所がある方だ。と、思っていた時が懐かしく感じる。緩やかな風に促され揺れる銀鼠の髪を、じっと見つめながら俺は心の中で呟いた。
ふとした瞬間に消えてしまうのではないかと思うくらい儚く見えたこの後ろ姿が今や、あぁ……また面倒ごと持ってきた……どこか遠くに逃げたい……、と脳が即座に判断してしまうのだ。世話人としては多分よろしくない。よろしくないのだが……今までの経験が、そう判断させるんだ。
俺は悪くない、悪いのはコルネイユ様だ。訳のわからんことを突然言ったりするコルネイユ様だ。俺は絶対悪くない。旦那に聞いても俺は悪くないと言ってくれる……はずだ。
「イロンデール」
「……」
「イロンデール」
「……」
917