風評被害 黄昏が夕闇の色に変わり、無色透明の沈黙がバス停を包み込む。メリーゴーラウンドの照明がベンチを固定する金具に鈍く反射するのを、わたしはどうにも落ち着かない心持ちで見ていた。
バスが来るまでまだ時間がある。
せっかくの機会だ、以前から思っていたことを告げるべく、わたしはお隣に座る髪飾中学校生徒会長へ声をかけた。
「ねえ、札槻くん。ちょっといいかしら」
「はい、何でしょう? 瞳島さん」
「札槻くんって、見た目だけなら関西弁を話してそうなイメージよね」
札槻くんの細い眉がぴくりと動く。
「ひとを見た目で判断してはいけませんよ、とご忠告申し上げたいところですが、後学のために、そのように見えた理由をうかがっておきましょう。瞳島さん、お聞かせ願えますか?」
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