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    #蛍火艶夜

    佐伯雛子

    DONE坂視点坂伴ssです。坂の母を捏造していたり、モブ上官が出てきてたりな短い話です。ピアノを弾くサカノーエコージが書きたかったんです。
    因みに作中で坂が弾いている曲はタイトルの曲です。編曲は作曲者の妻版でご想像ください。元々原曲が歌曲でそれをピアノ用に編曲しているので、歌詞を読みながら、曲を聴きながら読んでみるとより楽しいかもしれません。

    ※9話ネタバレ注意
    ※ばんちゃは最後しか出ません。
    Widmung【坂視点坂伴ss】少し昔話をしよう。
    これは私がまだ少尉に上がりたての頃。季節は夏、上官に連れて行かれた迎賓館での夜会での話だ。

    ***

    上流階級の社交場とは退屈なものである。華やかなドレスや着物に身を包んだ淑女達、仕立ての良い正礼装姿の紳士達が一つどころに集まっては噂話に花を咲かせ、上辺だけの微笑に、言葉尻にじわりと欲を潜ませて。何とも居心地の悪い場所であった。

    おまけに黒を纏った男達の中で第二種軍装の白は目立つのか。至る所から無数の視線を向けられているのが痛い程分かった。頭のてっぺんから爪先までを這う、ねっとりとした視線。粗はないかと誰も彼もが己に点数をつけているようで堪らなく不愉快だった。

    己の成功の為に飾り立てた連中から勧められるがまま上機嫌で杯を煽る上官を横目に、青二才であった私はこのくだらない集まりが早くお開きになることをただ願っていた。そんな中、舶来物の高い酒に酔いが回った上官がお世辞にも小さな声とは呼べない声で唐突にこう言ったのだ。ーー“なぁ、坂ノ上少尉。そろそろ余興が見たいじゃないか。貴様、何が出来る? あぁいうのは弾けないのか”ーーと。
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