屏風の虎射すくめる眼光×爽秋を彩る経験 1
恋人同士、家族、それからひとり旅。
少人数経営、一度に入れる客もそう多くないその宿は、立地は少し不便だが、羽を伸ばしてゆっくり過ごすのに最適。
秋口には美しい紅葉が見られる山々に囲まれた落ち着いた土地柄に、一部では仲居が総じて見目麗しい男であるなどという俗っぽい噂も含めてひそかに人気の宿屋があった。
さほど大きくないその宿には日々、様々な客が宿泊し、それぞれがどこか満ち足りた様子で宿を後にする。
シーズンオフになり落ち着いた春先からある問題が浮上したことで、宿の経営陣は顔を突き合わせていた。
「屏風の中の虎が動いた?」
玄武が眉をひそめて聞き返すとみのりはうなずいてから話を続けた。
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