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    ff14Haurneki

    @ff14Haurneki

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    蒼天時代のエス+光(自機)話。自機の自我が強めです。あとヒカセンがニャンよりデカいのでご注意。中の人はエス光推しです。
    自機:名前…ブライト・リピア(ローエンガルデ♀、竜騎士ジョブクエクリア済み)

    竜騎士は未来の夢を見る 高地ドラヴァニア、チョコボの森。目と鼻の先にドラゴン族の根城があるその場所は、その名の通りチョコボを中心に野生の動物達がゆったりと暮らしている。強大な竜の力をもってすればそんなものは入れ食いになってしまいかねないだろうが、天高く伸びる何とも背の高い木々の、これまた空を覆い隠さんとばかりに広がる枝葉によって守られていた。これから竜達の下に突入せんと行軍を続ける自分達一行としても、この環境は正に渡りに船である。
     とはいえこの天然の目眩ましは土地全土に広がるわけではない。竜のお膝元で尚チョコボ狩りをして暮らしている酔狂な人間達が住まう集落テイルフェザーや、土地を二分するように流れるウィロームリバーを境に環境は一気に変わり、岩肌が目立つ地形になる。森を越えたら竜達の巣と成り果てている塔まで一気に進む必要があるだろう。
     さて今はと言えば、ウィロームリバーに掛かる北の橋を渡った直ぐ側の平地で、一度休息を取ろうと野営の支度をしていた。強行軍になるのなら休める今の内に休んでおいた方が良いだろう、という冒険者からの提案である。そんな悠長にしている場合では無いと言ってやりたいところだったが、結局その提案を飲んだのはなんてことはない。奴の視線の先に気丈に振る舞うアルフィノがいたからだ。自分の事は気にしないで欲しいなぞと強がる坊っちゃんは、疲労を隠せもしない様子だった。イシュガルドを出てからここまでひたすら雪中行軍を続けてきたのだ。情報収集の為に立ち寄ったテイルフェザーでは多少休むことが出来たが、それも最低限。小さな体には過酷な旅路だったろう。流石に子供に無理強いをする程人でなしじゃあなし。結局氷女もその提案に賛同し、それならばと自分も頷いた次第だった。
     言い出しっぺの冒険者は、慣れた手つきでその辺りから拾ってきた枝を組んで焚き火を作ると、次は飯の為の食材を準備しているようだった。自分はといえば、奴の作った焚き火の番をしがてら槍の手入れだ。氷女とアルフィノは追加で食材を探しに向かったらしく、この近くには見当たらない。自分は兎も角、この冒険者も特に姦しくこちらを構う様子はなく、辺りには時折鳥の鳴き声や風が木の葉を鳴らす音が聞こえるのみだった。互いにやるべき事をやっているだけ、しかしこの沈黙も然程気まずさとは程遠く、何処か居心地のよさを感じさせる。
     
    「お、これここにも咲いてたんだな」
     
     ふと、冒険者の声が静寂に弾む。そっと声の方向に視線を向けると、足元に何やら見つけたのか剥き掛けの芋とナイフを手にしゃがみ込んでいた。こちらに返答を促す様子も見られないところを見るに、独り言らしい。
     
    「何がだ」
     
     そう返すと、冒険者はパッと振り返る。エレゼン族の男の中でもそれなりに背が高い方の自分と遜色ない、何なら自分より少しだけ上背のある大柄な体躯が横にずれた。が、そこに花と言えるような彩りは見当たらない。首を傾げてみせると、冒険者は再度その場にしゃがみ、ナイフを手にしたまま足元を指差した。
     それは花、というより雑草と言って差し支えないのではなかろうか。地面をカーペットのように這う小さな青々とした若葉と、これまた小さく素朴な白い花が散りばめられていた。これと言って特徴があるわけでもない、注視しなければ気付かず踏んでしまいそうな花。
     
    「リピア、っていうんだ。私の名前はこの花から取られたんだぜ」
     
     興味も失せて槍の手入れに戻ろうと視線を外したのに、その言葉でもう一度そちらに目を向ける羽目になった。別にコイツの名などどうでも良かろうに、目の前で人懐っこくふやけたニヤけ面を晒す冒険者の空気にあてられたか。
     
    「…随分と可愛らしい事だな」
    「そうなんだよ。こんな可愛い花の名前なんて取ってさ」
     
     からかいの言葉を軽く吐いてみたが、自分のような人種に慣れているのかお気楽なのか、冒険者は気を害した様子もない。花を指し示した冒険者は満足したのか、おもむろに立ち上がって食材の仕込みに戻る。チョコボに背負わせていた木製の台の上に鍋とまな板を乗せ野菜の皮を剥いては乱切りにして鍋の中へ。それらが少し小さく見えたのは、恐らくはアルフィノの口に合わせてあるのだろう。気の回ることだ。剥いた皮や屑は足元に置いた籠の中に落とされていく。
     
    「リピア、はお前のファミリーネームじゃないのか」「いんや、私には…というかローエンガルデはファミリーネームは無いやつが多いぜ」
     
     曰くルガディン族、とりわけローエンガルデという種族は個人主義が強く根付いており、姓というものを用いない者が多いらしい。更に傭兵稼業に勤しむ者が多いことから、エオルゼア共通語の単語二つで作られる通り名を名前とするのが主流だとか。
     
    「血のつながった家族でも、下の名前は皆バラバラなことが多いんだ。私と母さん達も名前全然違うんだぜ」
    「不思議なことをするもんだな」
     
     エレゼンやヒューランの多いイシュガルドではついぞ聞かぬルールに、文化の違いをひしひしと感じた。
     
    「私の実家は北アバラシア山脈の、更に火山の近くでな。岩と、あっても乾いた草とか木しか無い場所で、花なんざ殆ど咲いて無くてさ。母さんからそう教えられてもイマイチピンと来なくて」
     
     喋りながら器用に調理を続ける背中を見る。初めて会った時は互いに槍を携えていたが、職人としても腕が立つというのは本当らしい。そうしている内に仕込みは全て終わったらしく、ナイフをまな板の上に置いた冒険者は、野菜くずの入った袋を手に取ると懐からファイヤシャードとウィンドシャードを取り出した。二つ同時にエーテルを込めることで発した温風を袋の口から中の野菜くずに当てる。カラカラに乾かしてから粉末にして肥料にするのだそうだ。
     
    「花から取った名前だっていうから、「何でここにないものの名前なの」って聞いてみたんだよ。そしたらさ」
     
     他人の昔話に耳を傾けるなど、普段の自分を知るアイメリク等が見れば目を丸くしそうだな、と他人事のように考える。自分だって奇妙な心地だ。嫌味もなく、こちらの語気の荒さを気にせず、しかし必要以上には踏み込まない。冒険者として培ってきたこの女の社交術なのだろうが、その適度な線引きの上でのやり取りが心地良い。言葉を切った相手に無言で続きを促してやれば、乾燥を終えたのか袋の口を縛りながらまた笑う。
     
    「傭兵として若い頃訪れた森の中で見た、木漏れ日の下で輝く小さな白い花達が忘れられなかったんだと。だからデカく偉くならなくていいから、ささやかでも人の心に寄り添える、輝かしい人になりますように、って願いを込めたんだって」
     
     己と肉薄し押し勝つ程に強い…イシュガルドの外では「英雄」などと呼ばれ、己と同じく竜の眼に選ばれた、もう一人の蒼の竜騎士。そんな肩書を外して見たこの女は、ただただ無邪気で快活で、親からの贈り物と祈りに照れくさそうに、しかし喜ばしげに笑う。一人の母親に慈しまれ、愛された一人の娘だと痛感させられる。
     
    「母さんがな、気になるんなら自分の目で見に行ってみると良いって言ってくれたんだよ。金を稼ぐ腕っぷしも手管も交渉術も全部教えてやったんだから、自由に色んなことしてみりゃあいいって」
    「それが冒険者になった理由か」
    「の、一つだな。諸々片付いたらこの辺りもまたゆっくり見て回りたいよ」
     
     「自由」…言葉にするのは簡単だが、それを体現するのは何より難しい。この女とて、与えられた肩書から生じたしがらみに巻き込まれ今に至るだろうに、そんなものは足枷にもならんと軽やかに、どこまでだって歩かんとするその姿が眩く思えた。復讐の為ただ槍を研ぎ続けた、吹雪の中竜を殺し続ける自分には、とても。
     
    「エスティニアンはさ、ニーズヘッグへの復讐に身を捧げてるんだろうけど、それが終わったらどうするんだ?」
    「どうも何も…今考える事でもあるまいよ」
    「今だから考えるんだろ。自分でもピンときてないけど、蒼の竜騎士が二人もいる今だからこそさ。…あ、もしかして自分の一生じゃ決着がつけられないとか思ってたり…」
    「ハッほざけ」
     
     煽るような物言いに返せば、そうだろうと言わんばかりに笑ってみせるからむず痒い。
     
    「ニーズヘッグは俺がこの手で終わらせる。次世代の誰かに託すなぞ冗談じゃない。俺がこの手で殺してみせる」
    「なら尚更その後のこと考えなきゃだろ!何がしたいとか、どこに行ってみたいとかさ」
    「お気楽な冒険者殿はどうにも気を引き締めると言うことを知らんらしいな。それに、俺には必要ない」
    「あるさ」
     
     突き放すような物言いをしても全く怯まないのが腹立たしい。あまりにも背の高い木々の葉にびっしりと覆われていた筈の頭上から、日が動いたからか少しだけ木漏れ日が差し、冒険者を…ブライトを照らしている。奴は相変わらず機嫌を損ねた様子もなく穏やかに笑っていた。
     
    「私の母さんが私に自由と生きる道を示してくれたようにさ、自分の家族に健やかな日々を願わない親なんていない…まぁたまにそういうのいるけど」
     
     一瞬だけ顔つきが曇る。思い返されるのは雲霧街に生きる浮浪児達だ。あそこは竜の襲撃で親を失った戦災孤児が多いが、その合間合間にひっそりと大人の理不尽で切り捨てられた者もいる。きっとこの冒険者は、国内でも国外でもそういった光景を見てきたのだろう。
     
    「でもきっとアンタの両親はそういうクズじゃ無いはずだ。それはアンタの今が証明してるだろ。だから、全部終わってからでいいからさ。何でもいいんだ、見つけてくれよ。自分が生きていて楽しいって思える為の何かをさ」
     
     何を分かったような口で、と凄んでやろうかと思ったが口が動かなかった。きっと、そうだろうと自分でも納得してしまったからかもしれない。自分もアミニャンも、彼らに愛されて生まれ、生きてきたのだから。この女の言う通り、だからこそ自分は槍を手にしたのだから。
     生きる楽しみ、喜び。竜を殺す事以外で自分にとって何がそれを与えうるかを考えた時、一つも思い浮かべることが出来なかった。ニーズヘッグを殺す、竜を殺す。それ以外を自分は知らない。全て、あの崩れた小さな家に置いてきてしまった。
     
    「ん〜ならさ、一度旅でもしてみたらどうだ?」
    「お前みたいにか?」
    「今でこそ英雄とか何とか言われながら旅してるけどさ。楽しいぜ、一人旅。金が無ければ護衛や用心棒として仕事をすれば、アンタなら軽々稼げるだろうし…そうして訪れた場所でその国の飯や酒を楽しんでみたりしてさ。アンタなら割とどこにでも行けると思うぜ」
    「………」
     
     イシュガルドを出ていく自分など、今まで想像すらした事はなかった。槍一本を携え、竜の侵攻に気を張る必要が無くなった皇都の門から出ていく自分を想像する。最初に行くのなら隣接したグリダニアだろうか。それとも冒険者が作った街だと聞くモードゥナか。用心棒としてなら自分も食いっぱぐれる事はないだろうか。…どこまでも自由なお前のように、俺も歩いていけるのか。
     黙り込んだ自分に戸惑ったのかわたわたと手を振ってみたりといつまでも賑やかな女を、そんならしくもない夢想をした己ごと鼻で笑い飛ばしておいた。
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    ff14Haurneki

    DONEエス光(自機)話。酔っ払いの相棒がなんかめちゃくちゃ柄じゃないこと喋っていますので、苦手な方はご注意。
    ※黄金までのネタバレを含みます。

    自機設定:ブライト・リピア…ローエンガルデ女性24歳。メインジョブ吟遊詩人
    愛をくれし君の ゴーニトルクの宝浜の白砂を、夕日のオレンジが染め上げる。西陽に照らされキラキラと輝く海を一望しながらの食事を楽しめるシェバーブチェは、トライヨラでも1、2位を争う人気を誇るレストランだ。メインディッシュのタコス以外にも串焼きのシュラスコやチップスのナチョス、この地で採れる新鮮な果物を使ったカクテル等メニューは充実している。海に面したパラソル付きのラウンドテーブルの下、武王ウクラマトお墨付きのタコスを頬張りながら、エスティニアンはのんびりとメスカルを煽る。アガベと呼ばれる植物の茎から採った樹液を蒸留して作られたその酒は、イシュガルドで慣れ親しんだワインやエール、クガネで好んで飲んでいた清酒等とは全く異なる味とスモーキーな香りがした。未知を楽しむは冒険者の醍醐味だという、冒険者の先輩である相棒の言を最近ようやっと理解できてきたように思う。どれつまみにシュラスコでも、と串焼きにされたロネーク肉を手に伸ばすと、聞き馴染みのある声が背中に掛けられた。
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