的場ゆめ静寂の中、静司の耳に聞き慣れぬ鈴の音が響いた。草むらをかき分けながら進むと、そこには一人の少女が立ち尽くしていた。ぼろぼろの服に、傷だらけの細い腕。そして、静司の目を捉えたのは、その手の中で黒く濁る妖怪の死骸だった。
「……お前がやったのか?」
少女は顔を上げた。その白く濁った瞳が、まるで何も映していないようで、静司の背筋に冷たいものが走る。それでも、彼女は確かに頷いた。
「やっつけた。……怖かったけど、近づいてきたから」
彼女の声は震えていたが、奇妙に冷静だった。妖怪祓いとしての経験が豊富な静司は、即座に異変に気付いた。妖怪は自然に死なない。しかも、ここに倒れているのは、それなりに手強い部類のものだ。目の前の小さな少女がどうやってこれを倒したのか、彼には見当もつかなかった。
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