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    roka_

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    えふわんパロのヒュさんのイラストの胸元にTKGの文字を発見し、ヒュさんにTKG食べさせたいなと斜め上へ妄想を膨らませた結果です。
    素敵な世界観をお借りしました☺️
    ポスターのヒュさんがかっこよくて〜!!卑怯です、ずるい!好き!!!!

    ※ヴェルナーは転生者(日本のサラリーマン)としています。
    ※タメ語で話しています

    たまにはこんな午後でも(あ…)
    スマホのカメラロールを眺めていた時、その写真が目に入った。それは現役時代の彼の写真が街中に大々的に飾られた時のものだ。
    覇王と呼ばれた元レーサーであるヒュベルトゥス。
    ヴェルナーは現在、彼の運営するチームに所属している。そして、その彼は今、ヴェルナーの隣で寛いでいる。いや、正確にいえばヴェルナーがヒュベルトゥスの家にいるのだが。チームの運営だけでなく他にも手広く会社を経営しており、その経歴や容姿から様々な雑誌の取材やテレビへの出演依頼なども多い。ヒュベルトゥスは毎日多忙な日々を送っているが、休日になると決まってヴェルナーを呼んだ。それは食事であったり観光であったり、そして家に招かれることもあった。
    (…まさかこれを撮った時は思いもしなかったよなぁ)
    そう、ふたりは現在、恋人同士というやつなのである。
    「何を見ている?」
    スマホを凝視していたからか、ヴェルナーの腰を抱いて引き寄せるとその画面をのぞき込んできた。隠すものでもないかとそちらにスマホを向けると、ヒュベルトゥスは少し驚いたような顔をする。
    「…懐かしいな」
    「だろ? さっき見つけて、そういや撮ったなって」
    「まだ出会う前だろう? その頃から知られていたのか」
    「そりゃ、アンタ有名だったし。マゼルのこともあったから一般人よりは知ってたよ」
    F1ドライバーになって世界一を獲りたい、そう言ったマゼルの夢を叶えるためにここまでやってきた。きっとそうでなければあのポスターの前で立ち止まることも、今この腕に抱かれていることもなかっただろう。しかし、マゼルの名前を出したことでわずかに眉を顰めるのがわかった。どうやら今は他人の話題はNGのようだ。ごめん、と言うように腰に回された手を撫でたり、優しく叩く。それだけで機嫌が直るのだから、すごく嫌というほどでもないのだろう。たんに構って欲しかっただけかもしれない。
    「しかし写真まで撮っているとは、少しは自惚れても?」
    …期待しているところ申し訳ないが、残念ながらそうではない。マゼルの話は出したが、この頃はまだマゼルはF1ドライバーになるなんて言ってなかったはずだ。ヴェルナーは当時のことを思い出そうとして「んー…」と唸った。確かにイケメンだとは思ったけれど、知り合いでもないし好きな芸能人とかでもなかった。この時はもっと違う、そう、胸のロゴに目がいったんだ。
    「あー…いや、卵かけご飯食べたいなって思って」
    「タマゴカケゴハン?」
    ヒュベルトゥスのレーシングスーツの胸元には、とある企業のロゴの『TKG』という文字があったのだった。













    「……なぁ、ほんとに昼飯これでいいの?」
    「良い」
    ヒュベルトゥスとヴェルナーの前には、ちょっと深めのボウルが置かれている。中にはホカホカの白米。そしてその上につやつやと光る生卵が乗っている。
    TKG、もとい、卵かけご飯。
    それはヴェルナーにはなじみ深いものなのだが、ヒュベルトゥスには初めてのメニューのようだ。茶碗がないのは少し残念な気がするが、まあ仕方がない。口に入れば一緒だ。
    あつあつご飯の上に新鮮な卵をひとつ。好みで具材を載せることもあるようだが、ここはあえてシンプルに醤油のみとした。白米も醤油もなかったので、近くにある大型のスーパーへ買い出しに行った。炊飯器はないが、鍋で炊けるとネットで読んだのでその通りに。米さえあればもうできたも同然の超簡単な料理。それが。
    「これが…タマゴカケゴハン…」
    高級レストランの味にも慣れているだろうし、普段から安くない食材を使った料理しか口にしていない男の口から出る『タマゴカケゴハン』の言葉に、どこかむず痒いような居たたまれないような気持ちになる。
    「これはどうしたらいいんだ?」
    前代未聞の食べ物にどう手を付けたらいいのかがわからないようで、ちょっと笑った。
    「好きに食べればいいんだよ。卵かけご飯にルールとかマナーなんてないから。そのままでもいいし、混ぜてもいいし」
    そう言いながら、ヴェルナーは自分のボウルの中の卵を割って適度に混ぜた。醤油を少し垂らすと、一気に和風の香りが漂って食欲をそそる。そのままスプーンで掬って口に入れると、懐かしくも間違いなく見たままの卵かけご飯の味がしてちょっとだけ感動した。
    「かつお節とか買っても良かったなぁ…」
    一気に脳内が日本の味に支配されて、欲が出た。こちらにも日本食はあるが、凝ったものや高級な寿司ばかりでこういった家庭で食べるような手抜き料理などはない。たまには悪くないな。米もまた買っておこう。チラリとヒュベルトゥスを見ると、わずかに戸惑いながらもスプーンを手に取ってヴェルナーの真似をするようにかき混ぜていた。
    (……なんかヒュベルが食べ物かき混ぜてるの変な感じするな)
    ナイフとフォークを綺麗に使うヒュベルトゥスも、パンに噛り付くヒュベルトゥスも知っているが、どことなく食べ物をかき混ぜるというのは少々行儀が悪く見えた。自分がやる分にも、きっとマゼルや他の人がやってもそうは思わないだろうに、不思議だ。それだけ、普段の所作が綺麗だからなのだろう。もたついた手つきが、妙に可愛く見えた。同じように醤油を垂らして、やや緊張したような面持ちのヒュベルトゥスがスプーンを口へ運ぶ。ぱくりと口の中へ消えて、ヴェルナーは思わず息を飲んで見守っていた。
    「……うまい」
    その口から出た言葉に、ほっと息を吐いた。
    一口、二口と消えていく卵かけご飯。時折醤油を追加しているから、もしかしたら少し味が足らないのかもしれないななんて思っていたが。
    「生の卵を使った料理というのはほとんどないが、これはうまいな。醤油、醤油だ。これは最高級品なのではないか?」
    「まさか、普通の安いやつだよ。あ、でも確か卵かけご飯専用の醤油とかもあるっていうのは聞いたことあるけど」
    「よし、買いに行こう」
    「ぶはっ」
    今にも席を立って即座に出かけようとするヒュベルトゥスに思わず吹き出した。
    むしろ気に入ってくれていたらしい。
    「いろんなアレンジとかあるみたいだから、そういうの見てからでも遅くないと思うけど」
    「なるほど…奥が深いのだなタマゴカケゴハンとは」
    普段の様子を知っている身からすると、なんとも面白い。
    まるで新しいおもちゃを知った子供のように目を輝かせているヒュベルトゥスを、少し可愛いと思ってしまったのは許されるだろうか。
    どうせこれっぽっちじゃ足りないだろうし、後でカフェにでも行こう。そして、卵かけご飯のアレンジレシピをあれこれ考えるのも楽しそうだ。そのあとに買い物をして、また明日美味しい卵かけご飯にチャレンジするのも悪くない。
    そんな休日もたまにはいいなと、ヴェルナーは目の前で美味しそうにご飯を食べる男に微笑みかけるのだった。




    fin
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