借金閣下(仮題) 宛もなく、目的もなく、何かを成すわけでもなく、色彩は奪われただ死んだように生きる日々。ルビコンが火に覆われた時。否、フロイトがハンドラー・ウォルターの猟犬に撃ち落とされた時から、スネイルは何かが腐り落ちるような音が頭から離れなかった。
フロイトの存在は上層部の半数にとって目の上のたんこぶだったが、また半数にとっては理想の偶像でもあった。アイランド・フォーで流星の如く現れた「それ」が自分達と同じように天然モノで、世代であろう「木星の英雄」の再来かと思わせる手腕を欲しがらない俗物はおらず。また、スネイルもそれを利用した。フロイトを手に入れるために上層部に取り入り、手を尽くして自分の首を代償にヴェスパー首席隊長という檻と枷を着けた。
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