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    mota0116

    @mota0116
    主に女体化

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    mota0116

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    ⚠️義父が出てきます
    ⚠️暴力表現あり

    愛しみに初恋 11話(途中) 視界に映るのは数週間ぶりの豊前の姿だった。見慣れたスーツを着崩し、真冬にも拘わらず汗を滲ませ荒々しく息を弾ませている。急いで豊前の頬に触れ、滴る汗をレースの袖口で拭った。
    「なんでここに……」
    「桑名から色々聞いた。やっぱり話がしたいと思って、俺は」
     頬に触れた手首を掴まれると共に、彼の心憂い表情に心臓が締め付けられる。その気持ちへ蓋をするよう豊前から紡がれる言葉を「ちょっと待って」と遮った。本当はその先を知りたい。でも、豊前の言葉を受け入れるとこれまでの決断が全て水の泡になる。私はまだ豊前の元には戻れなかった。
    「なんでだよ」
    「まだ話の蹴りがついてないから。来週には連絡できると思うからそれまで待って欲しい」
    「そしたら俺のとこ戻ってきてくれんのか」
    「……戻りたい、と思ってる。だから今は我慢して」
     眉間に皺を寄せ、少し不満そうな表情を浮かべる豊前。私の背後に立ち尽くす義母を鋭く一瞥し、掌から掴まれていた手首が解かれる。嫌々ながらも納得してくれたようで、少しだけ間隔を保つよう後退りした。
    「……分かった。俺はお前のこと信じてるから」
    「うん、ごめんね……」
     豊前はそう言葉を残すと背を向け、アパートのある方角へ歩み始めた。段々と彼を映す影は遠くなり、また二人の距離は大きくなっていく。そっぽを向くよう玄関の方へ戻ると、心配そうに見つめる義母が立ち尽くしていた。
    「せっかく会いに来てくれたのに良かったの?」
    「いい。今豊前に関わると現実から全て目を逸らしたくなる。私はまだやることがあるから」
     警察に相談すること、婚約を破棄してもらうこと。そして義父と絶縁すること。全て解決しない限り豊前との未来を見据える事なんて出来なかった。


     翌日、義母と二人で警察署の相談窓口へ向かった。用件を話すと女性の警官が案内してくれ、別室に案内される。数枚の書類を渡されると共に病院の診断書、痣の写真や義母の綴った日記など証拠になりそうな物を全て提示し、被害内容について事細かく質問された。義母の言葉はつらつらと綴られ、数十分後にようやくペンを走らせる手が止まった。
    「そうですね。お話を伺う限り、暴行罪もしくは傷害罪……と強制性交等罪に当たる犯罪となります」
     女性警官はただ泰然と罪科を羅列し、頭がいっぱいになる。取り敢えず「様々な罪を科せられる可能性がありますので」と端的に話され、愁眉を開く。しかし、話はここで終わりではなかった。
    「ただ、映像記録や音声記録の証拠がありません。被害者の供述だけでは成り立たないのが事実ですし、強制性交等罪となれば、必要となるのは目撃者の証言や被告の自白、いわゆる直接証拠などです。被害届を受理されても軽度の罰金程度で済むかもしれません」
    「そんなの……っ、あの人が自白するわけないじゃないですかっ!!家庭内なのに第三者の目撃なんか……!」
    「実際検体検査などを行うことがありますが、娘さんは最低三年前の話になりますので……証言だけでは厳しいかと」
     予想通りの返答だった。三年前の証拠なんて持ち合わせているはずがない。用意された被害届に諸々記入したが、差し出すことなく鞄に仕舞う。
    「……分かりました。じゃあ今日のところはこれで」
    「いいの?折角ここまで来たのに」
    「……私の言葉だけじゃ駄目なんでしょ?それに三年前の証拠なんてある訳ない。もういいや」
     結局警察も無力だ。形になる証拠がないと動けず、被害を受けても泣き寝入りするしかない人だって沢山居る。仮に被害届が受理させたとしてあの人が逮捕されるとは思えない。多額の示談金を払うなりして罪を免れようとする未来も見え、このまま拘泥するのも阿呆らしく思えた。
     帰りに最寄りのスーパーに立ち寄り、二人分の食材を調達する。そういえば家に戻ってから台所に立っていないと思い、始めて料理の腕を振る舞うことにした。
    「今日は私が料理するよ」
    「え、あなた料理できるの?」
    「こう見えてこの三年ほど料理してきたんだよ。口に合うかは分かんないけど」
     得意料理と言い切れるほどではないが、肉じゃがは頻繁に作っていた。じゃがいもと人参は大きめの乱切りにし、玉ねぎはくし切りにして白滝とボウルに移す。鍋に細切れにした肉を入れ、ボウルの野菜たちと炒めた。途中味つけの醤油、砂糖、味醂、酒を注いでよく煮込む。数十分煮込んでして味が整い、味見をしてから皿に盛り付けると、義母は「誰かに料理をしてもらうのは数十年ぶりだわ」と感動を覚えてくれた。
     二人で食卓に着き、小さく合掌して夕食を摂る。義母は箸を進め、数回咀嚼してからごくんと飲み込む。豊前以外の人に手料理を御馳走するのはいつぶりだろうか。じっと義母の瞳を見つめると、少しだけ眉をひそめて何かを考えている。
    「肉じゃが、とても美味しいけど…ちょっと辛いかも」
    「あっごめん、初めて作った時醤油の分量間違えてたんだけど豊前が美味しいって言ってくれてそのまま……」
     淡々と豊前の名前を発してしまい、思わず口を塞ぐ。いくら相手が義母だからって、豊前のことを話すのはどうなんだろうか。しかし義母は嫌な顔ひとつせず、頬笑みを浮かべたまま料理を口に運んでくれる。
    「仲が良かったのね」
     義母にとっては何気ない一言だろう。しかし、私にとっては豊前を否定されなかった事実だけでも十分嬉しかった。





     義母との関係が少しずつ修復した数日後。予定通り出張先から帰宅した義父は休む間もなく婚約話を進めてくる。義母とリビングに集められ、様々な書類を卓上に並べ出す。事細かく説明されるが全て右から左へ受け流していく。これを真に受けた所で私のメリットは何なんだろうか。義父が口を開いてから数十分後、漸く長話に終止符が打たれた。
    「……以上だ。再来週には食事会を入れてるからな……何不満げな顔をしているんだ。言いたいことでもあるのか」
    「……ない」
    「なんだ。はっきり言ってみろ」
    「私は婚約しない」
    「は?」
    「全部お義父さんの都合じゃない。私は豊前を巻き添えにしたくないから別れただけ。婚約するなんて一言も言ってないから」
     初めて冷静に発言することが出来た。芽生える恐怖心に嘘をつくよう衣服を握りしめ、なんとか気を紛らわす。しかし、私の言葉は義父の耳に到底届かない。拳でテーブルを叩きつけた途端、激しい剣幕で怒鳴りつけてくる。
    「何不自由ない暮らしを与えてやったのになんだその態度は!今まで誰のおかげでここまで育てて貰ったと思っている!」
    「あんたに育てて貰った覚えはないっ!!」
    「なんだ……?前までは大人しく言うことを聞いていただろうがっ」
     大きく右手を振り翳され、反射的に瞼を閉じる。しかしその拳を浴びることはなく、割って入るように義母が声を上げた。
    「すぐ手を出すのはやめてっ!」
    「お前も俺に逆らうのか?」
    「冷静に話してと言ってるの!」
     庇って貰ったのはこれが初めてだった。義母の声は微かに震え、視線も中空を漂っている。相当無理をさせたようで、頬を伝う冷や汗も尋常ではなかった。
     しかし、いつもと違う義母の様子に愕然した義父は少しだけ身を引く。舌打ちを残すと、リビングを後にした。その姿が消えると同時に体の力が抜け、二人で深い溜息をつく。本当に義父を説得し、破談なんて出来るのだろうか。先が思いやられる一方、豊前の元に早く帰りたいという気持ちが募っていくばかりだった。

     
    「今日は疲れたでしょ? ゆっくり休んでね」
    「お義母さんこそ。じゃあおやすみ」
     あれから義父は自室に籠り、義母と二人で夜を迎えた。入浴後にリビングで会話を交わし、義母が部屋に戻ってから自室に向かう。放置していたスマホを手に取ると桑名から数件連絡が入っており、内容を確認する。豊前のことや篭手切、雲や五月雨との出来事を記してくれ、思わず笑みが零れた。
     早く絶縁を切り出して元の日常に戻りたい。返信をしようとキーボードを開いたその時だった。閉まっていたはずのドアが動き、義父が室内に入ってくる。思わず心臓が跳ね、それ以上の声が出なかった。スマホだけは奪われないように胸元で握るが、それに気づいた義父は容赦なく私の腕を掴んで剥奪した。
    「くわ、な……。あの前髪の重い男か」
    「なんで……」
    「あいつが最近お前の周りばっかり気にしてるから中々近づけなかった。これで邪魔されないと思ったのにまさか連絡をとっているなんて。躾が必要だな」
     握っていたスマホを床に叩き落とされ、液晶ガラスが四方八方へ飛び散る。真っ暗になった画面は二度と動くことはなかった。義父は私の両手首を掴んで押し倒そうとするが、体の力全てを振り絞って必死に抵抗する。豊前だけに許していた身体は絶対に触れられたくなかった。
    「嫌っ!! 」
    「声を出してもあいつは起きないぞ。病院で睡眠薬を処方されているからな……選択肢をふたつやる。このまま婚約を破棄して一生俺の玩具になるか、婚約を受けてこの家を出るか。俺が嫌いなら答えは決まってるだろう?」
    「両方に嫌に決まってるでしょ!!」
     声を絞り上げた瞬間だった。舌打ちと同時に義父の右手が振り翳され、頬に平手打ちを食らう。思考回路が遮断されるよう意識が揺らぎ、衝動に耐えれなかった体はベッドから崩れるよう床に倒れてしまった。しかし、起き上がって抵抗しなければ殺される。疼く頬を押さえて体を起こすが、鈍い体に刺激を与えるよう蹴りを入れられ、腹部に大きな振動が走った。
    「い……っっ」
    「昔は素直だったのにどうして変わってしまったんだ。人様に受け渡すモノに手荒な真似はしたくなかったが仕方ないな」
     呼吸する間も与えぬよう肺を蹴り上げられ、息が途切れる。何度も何度も振り落とされる土踏まずに全身が圧迫され、上手く呼吸ができない。涙で視界が揺らいでいき、ただ潰される体を丸くすることしか出来なかった。
    「げほっ、かはっ……」
    「今日はこのくらいにしといてやる。これ以上酷いことされたくなければ早く快諾することだな」
     義父は怒りをぶつけるようドア付近の壁に拳を打ち付け、部屋を後にした。嵐が過ぎたような寂たる室内に、取り残された喘鳴だけが音を零す。浅い呼吸で酸素を巡らせるが、骨の髄まで滲み渡るような激痛だけが残る。頬に集中する熱と鉄の味、廃忘していたはずの苦い記憶も私の心を蝕んでいった。
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