逢璃と一緒に料理を作る話「料理を一緒にしたいの」
胸を張りこちらを見上げる逢璃に、祀蛇李夭は目を眇めた。
とある日の昼下がり。うららかな日差しが、のんびりと都を照らしている。
平和な日だったはずだが、なんだか面倒事に巻き込まれそうな気配だ。宮に用があり、珍しく昼前に大内裏を訪れたのだが、時間をずらせばよかったか。
「天雨に言え」
「そこなのよ、李夭」
芝居がかった仕草で人差し指を立てる逢璃に、李夭は顔をしかめた。
「ひな姉に、普段のお礼がしたいの。わたし、ひな姉のおかげでこんなに料理できるようになったわって、料理を作っていってあげたいのよ」
「一人でやれ」
「自信がないのだもの」
堂々と言うことなのかそれは?
呆れを最大限に込めて逢璃を見やるが、気づいていないのか気づかないふりをしているのか、少女は両手を握り合わせて、李夭を上目遣いに見上げた。
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