支部年始パーティー予定の時間になって、いそいそと準備を始める。年明けだからか、支部内でパーティーが開かれていて、開催場所の中央本部からは多くの職員の話声が聞こえてくる。
急いで会場まで足を運んでいると、記録チームチーフのマリツァとぶつかってしまった。
「マリツァさん?どうして今上層に?」
素朴な疑問を投げかける。選ばれた職員しかつけられない「角」ギフトを持つ彼女は、福祉チームの手伝いだと淡々と述べて、クリフォト抑止力が全部門に行き届いているかを確認していた。手に持っている確認用の紙には、上層のアブノーマリティの名前と、チェックマークが丁寧に書かれていた。
情報チームのエレベーターを通って下ると、いつもより一層豪華な中央本部チームがあった。メインルームに置かれた大量の料理に、談笑する職員たち。いつもの殺伐とした空気とは違い、非常に和んだ空気感が漂っている。
酔い潰れたガブリエラとそれを介抱するパーカーや、マックスの被写体になっているヤムヤムと、心配になるようなところはあるけれど、全員この催し事を満喫しているようだ。
「あれ〜?リアだ〜。ちょっと遅かったね〜?」
こっちに気づいたブラウンとオノリオが近づいてくる。新年早々この二人は運試しで遊んでいるらしい。遊びでくじ引きをしているオリバーが見たことのないような死にかけの顔をしているのが遠目で見えた。
「リア!これ引いてみて!」
オノリオがリボルバーのような物を差し出してくる。恐らくロシアンルーレットに使う物だろう。
恐る恐る引き金を引くと、勢いよくゴム弾が発射された。
「いっっっっったっ!?!?」
普段のミミック防具なら全く痛くないだろうけど、今はスーツ姿だからか非常に痛かった。うっすらと涙を浮かべると、二人は当たりを引いたプレゼントだと言ってくじ引きで当てたであろう景品を渡してきた。大きく一等と書かれているが、あまり触れないでおこう…。
全職員が揃っている中、管理人の姿が無かった事が気になった。普段なら調子に乗って参加しに来た途端、一定の職員からフルボッコにされているのに、今日は未だに姿を現さない。チーフ達に聞いてみても、誰も見ていないそう。すると、何かを閃いたのか二人ほど物凄い速さで何処かへ走り去って行って…
「待って!この流れ知ってるって!ちょっ…!アンジェラ!助けて!!!アンジェラァァァァァァっ!!!!」
管理人が引っ張られてきた。
必死の抵抗も虚しく、両手両足を抱えられて登場した管理人は、職員達からぐいぐいと料理を口に押し込まれている。少し気の毒だけれど、こんな所でも新年を祝えた事に少しばかり安心した。