「マスター。そういえばふと思い出したのですが──あの指輪。誰に渡したのです?」
「ゆびわ? ああ、バディリング。道満、あれ欲しいの?」
「いいえまさかまさか、そのような事は。マスターから指輪を、そう指輪を下賜されるなど、この影法師の身には畏れ多いことにございますれば……」
「うん、道満に渡す気はないかな」
「……」
「わたし、今の指令構成気に入ってるんだよね。それを崩してまで入れる価値がこの指輪にあるかって言うと……」
「我が主よ。そのリング、儂にいただけますかな」
「……何故?」
「いえいえ。マスターが林檎を砕き、時間を注ぎ、精神を焚べ──苦労して手に入れたであろう其の指輪。折角ならばひと呑みに食ろうてしまおうかと思いまして。フフ、フフフフフ……」
「……そんなことしていいの、道満?」
「指輪は剥がせるけど。血肉に融けたら、もう剥がせないよ。道満風に言うと、愛って言うのかな。わたしの愛とずっと一緒に在るなんて──道満的にはナシじゃないの?」
「ン……ンン……ンンンンン…………」
「あっ逃げた」
「──これは……道満に口で勝った……!?」
(勝っておりませぬぞ。この度は残念ながら試合不成立でドロー、ということに……)
「こいつ、脳内に直接長文を……」