隣を歩く伊春が、ご機嫌な鼻歌を溢している。
彼が最近気に入っている洋ロックの新譜は、見せてもらっても歌詞を理解することは出来なかったけれど、片耳だけ貸してくれた有線イヤホンで聞いた時よりも、このハスキーボイスで歌われる方が、心地よい旋律を奏でているような気がするなぁなどという、ちょっと失礼な感想が脳裏をよぎった。
「あの店、めちゃくちゃ美味かったなぁ、レノ」
「はい、また行きましょう。俺、今度は生姜焼き定食が食べたいです」
緊急怪獣警報を聞いて立川基地に戻ったレノたちは、自室に戻ることなく怪獣スーツを着込み、あの子どもたちやOBだと言っていた館長たちに格好良いと言ってもらえるような活躍をして見せようと気合十分で出動したものの、抱えたアサルトライフルを大して使うことなく片付いてしまった。
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