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    Mangetuko_o1

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    Mangetuko_o1

    ☆quiet follow

    とある世界とある時代が舞台
    今回もかなりのぶっ飛び設定です!
    なんでも許せる方向け
    リン君→吸血鬼
    ガノ様→吸血鬼の血を吸う吸血鬼
    ラブ無いです!!!すみません🙇

    街灯の灯りが煉瓦造りの町中を照らす
    その反面一歩大通りに入れば
    そこには闇が蟠り妖しい気配と罪の匂が漂っている。

    「きゃ!」
    微かな悲鳴と布ずれの音。
    暗闇にひと組の男女。
    「やだ!こんなところで」
    「誰もいないさ….」
    闇に溶けていく2人の声。

    「こんばんは….良い夜ですね」

    空から降る甘い囁き声に2人は硬直し空を仰ぐ
    そこには人の影はなく、2人は顔を見合わせる。
    「こんな場所で密会ですか?」
    再び囁くような声。
    「ひっ」
    男女は真っ青な顔で震え上がる。

    2人が上げようとした悲鳴は上げられることはなかった。


    「聞いた?5件目の」
    「聞いた聞いた!!」
    「びっくりよ本当に!」
    日が登り朝
    女性たちの井戸端会議の話題は昨日新聞に乗った5件目の吸血事件のことである。

    先月と今月で5件目
    1件目は郵便配達の青年
    2件目はパン屋の働き者の青年
    3件目は書店で働く青年
    4件目は創作旅行に来た画家
    5件目は靴屋と鍵屋の娘と息子である
    それぞれ意識はあるもののその時の記憶がすっぽり抜け落ち、生活に支障が出るほどの無力感に苛まれている。
    全員に共通する外傷が首筋に残る跡である。何かに刺されたような穴が二つ。そしてそれはどの事件も同じ大きであり、故に連続吸血事件として山間の小さな町に不安と恐怖をもたらしている。

    「おはようございます。今日のお野菜持ってきました」
    そんな彼女たちの話の中に突然響くキリっとした青年の声。
    金の髪に青い瞳、農家で住み込みで働いているリンクは、野菜を乗せた荷車を引いて野菜を届けるのが朝の仕事である。

    「あら、おはよう。ありがとう」
    「おはようございます」
    「この後学校?」
    「はい、終わったら行こうと思っています」
    ハキハキニコニコと答える青年に不穏な事件の不安が薄れていく。
    「今日も元気がいいわね」
    「気をつけるのよ、美人なんだから」
    「そうですね、夜は出歩かないようします」
    リンクは空になった荷台をガラガラ引いて学校へ向かった。
    ー美人なんだから
    ー華奢なんだから
    ー可愛いんだから
    今日で何度その言葉を聞いたことか。
    「好きでこの顔と体じゃないんだけどなぁ」
    はぁとため息をこぼす。
    「まぁ僕が襲われる事なてありえないんだけどね。」
    小さくつぶやかれた言葉は引く荷台の音にかき消されていった。


    町を見下ろす小高い坂の上
    そこにはこじんまりとした教会が立っている。町での婚礼や祭事、葬儀などを一手に引き受けている。教会の神父は白髪の目立つ穏やかな雰囲気の人で、皆の相談役であり頼られる人である。
    いつもは穏やかに教会周辺の掃除などをしている神父だが今日はソワソワと教会前を行ったり来たりしている。
    ガラガラと響く馬車の音にハッと!姿勢を正し入り口前に立つ。
    降りてきた人物に身を固くする。
    長身にたっぷりとした赤い髪、彫りの深い顔。
    「お、お待ちしていました。な、長旅お疲れ様です。」
    「挨拶は良い。それよりも例の件だ。」
    金色の鋭い双眸に睨まれヒッと飛び上がった。

    吸血事件が起こったらすぐ知らせるように。
    それがこの教会の神父になった頃耳にタコができるほど先輩神父から言われた言葉だった。まさか自分の担当するこの穏やかな町にそのようなことが起こるとは思わず、報告?どう書けば?と起こった日時、場所、被害者の職業と年齢名前を記し中央の教会本部に出したのは1件目の吸血事件のすぐ後のこと、それから時をおかず達筆な手紙が届いた。貴族のみの使える印の押されたそれは神父の手を震えさせるのには十分で冷え切った指先でその手紙を読んだ。
    ー近々町の吸血事件の調査に伺う
    そう記されていた、そして今日その手紙の差し出人であるガノンドロフが到着した。

    教会の奥、書庫として使われる場所に新聞記事、そして神父が集めた被害者の診断書や職業が書かれた書類、場所や地図が並べられる。
    「既に5件か、被害者は全て無力感に苛まれていると」
    「はい、そうです。」
    「……死んではないのだな」
    「はい」
    口元に手を当て何らや思案している。
    「明日、病院の場所を教えてもらえるか?」
    「はい、わかりました。」
    神父は緊張した面持ちで答えた。


    「神父様おはようございます。野菜持ってきましたよー」
    明るい声が響く。その声に教会前を掃除していた神父は顔を上げる。
    「おはようございます。今日もありがとうございますリンク。」
    野菜の入ったカゴを小脇に抱え坂を登ってくる姿は生き生きとし、金の髪が朝日を照り返している。
    どうぞこれと差し出されたカゴを受け取り、どうですか?最近は?ちゃんと学べてますか?とたわいもない話をしていると戸の開く気配。

    「あ….」とリンクは思わず息を呑んだ。
    長身に赤い髪、金色の瞳、嗅ぎ慣れない香水の香り。
    ─かっこいい…..
    ドっと心臓が高鳴る
    「おはようございますお出かけですか?」
    神父の問う声に「あぁ」と短く答える声は低く耳に心地いい。
    バチンと目が合いさらに心臓が跳ね上がった。
    姿が見えなくなってから、リンクは「だ、誰ですか?」とドキドキする心臓の音を聞きながら神父に尋ねる。
    「中央から来たガノンドロフ様です。吸血事件の事を調べてるそうですよ。」
    「ガノン…ドロフ様…..」
    口の中で名をつぶやいた。

    日は既に西の地平線へ沈み、空には星と月
    リンクは夜の闇に半分身体を溶かし、教会の2階の窓を望める木の上。
    薄いカーテンのかかる窓からは光が漏れ、ガノンドロフが何やら書き物をしているのが見える。
    ─やっぱりかっこいいな….
    うっとりと青い瞳を細め見つめる。
    ─美味しいのかな….
    薄い唇を指でなぞる。そこには銀色の鋭い牙がのぞく。
    リンクの夜の姿であり隠している姿。5件の事件の加害者である。
    ふとガノンドロフが顔を上げる。すっと向けられる目線。
    ─!?
    目が合った気がして、急いで木から飛び降りる。足音を立てず地面に着地し、激しく脈打つ心臓の音を聞きながら急ぎ帰路についた。

    「被害者が回復したそうよ!」
    「記憶は戻ってないって」
    「あの貴族様が治したんでしょ。」
    今日も井戸端会議は賑やかだ。
    リンクはいつもの通り野菜を置いていく。
    ガノンドロフが教会に来てから5日目。
    リンクは毎夜教会の見える木の上から観察している。
    ーどうしよう?どうしたら、夜外出てくれるかな?
    そればかりを考えている。
    今までの5件全ては自分に声を掛けてきた人だった。猫撫で声で夜待ってると言えば素直に従ってくれた。
    5件目の2人は鍵屋の息子を呼び出したら、偶然2人が鉢合わせし、不本意だが2人とも犠牲になってもらった。
    ─何かチャンスがあればいいんだけど。
    リンクは足早に学校へ向かった。

    夜ー再び教会の見える木の上に来たが、部屋に灯りはない。
    ーあれ?居ない?
    あたりを見回すも姿はない。
    すんすんと匂いを嗅げば淡い香水の香り。
    ─あ、中心の方だ....
    キラと青い瞳に妖しい炎が宿る。
    ニと笑い闇の中へ跳躍した。

    ガノンドロフは取り寄せた荷物の受け取りと報告書を送るため、町の中心に出ている。教会を出たのはすでに夕闇迫る頃。今からここを出れば外は闇だろう。
    ─ならば出会えるやもしれんな。
    期待を胸に建物を後にした。

    闇が町を包む。
    路地に靴音が響く。
    「こんばんは、良い夜ですね。」
    掠れた甘い声が響きガノンドロフは足を止めた。
    「あぁそうだな。」
    手際よく紙巻きタバコに火をつける。ふわりと上がる紫煙。首筋に、ひやりと冷たいものが触れる。ふぅと紫煙を吐き出す。

    「あ、あれ?」
    リンクはまとわりつく紫煙にジタバタしている。ただの煙のハズなのに体にまとわりつき、離れない。
    「そのうち消える。」
    金色の瞳に見下ろされ逃げ出したくても逃げ出せない。
    「さて、話をしようか?」
    ガノンドロフの顔をリンクは思い切り睨みつけた。

    軽々と担がれ、教会の入り口を潜る。
    幸い神父様に会うことなく、ガノンドロフの使用している2階の部屋その寝台の上に下ろされた。未だ紫煙には縛られたまま。

    ゆらゆらと揺れるランタンの炎
    絶え間なく立ち上がる妖しい紫煙
    「今回の犯人だな?」
    「煩い!」
    ギっと睨む。
    「そう怖い顔をするな。」
    「早く家に帰してくれ!」
    ー最悪だ!!まさか捕まるなんて!!!
    ジタジタするが紫煙の拘束はしつこく外れない。
    はぁっと短いため息。
    ぎっと隣に腰掛ける姿を目線で追う。香る香水。その香りにゾワっと鳥肌が立つ。
    「...古来より吸血鬼はある時期ある場所に現れ何かしらの事件を起こし、そして滅ぼされるかもしくは封印されてきた....その結果今やその者たちは少なく希少価値が高い。」
    突然始まる見えない話に戸惑う目線を向ける。
    服の襟首を摘まれ、「な...何?」と困惑する。
    「それ故に、その血を糧にする者は今や少なくなり姿を消しつつある。」
    「んっ」
    濃い香水の香りに目眩がする。
    首筋にかかる吐息が熱い。じわじわと体温が上がる。
    「...良い..香りだ」
    「...あっ」
    首筋にガブリと噛みつかれ切ない声を上げた。
    皮膚に食い込む鋭い犬歯、皮膚を割く痛みはあるはずなのに気持ちが良い。
    「あ...っ!や....」
    口から飛び出す自分のものとは思えない声に困惑し逃げなくてはと心が訴えるも体は意に反して熱を帯びる。
    ─何?何これ???
    ぞくぞくとしたものが背を伝い、意識が混濁する。今まで経験した事のない甘い痛み。
    「あっ...っ」
    ジュッときつく吸われその衝撃にぶつりと意識が暗転した。

    傾ぐ体。その体をガノンドロフは両腕で支え、口を首筋から離す。
    白い肌に残る二つの赤い跡。
    愛おしそうに舌先で舐め上げ、意識の無い体を優しく寝台へ寝かせる。
    「...やはり良いな。」久しぶりに潤った喉の渇きに目を細める。
    「逃さんぞリンク。」
    すやすやと眠る寝顔を見下ろした。

    数週間後、リンクの姿は政治の中心である中央に向かう馬車の中にあった。
    手には少しの荷物。
    目の前にはガノンドロフ。

    捕まり吸血され目覚めた時
    怒りと悔しさと恥ずかしさがいっぺんに込み上げその感情の行き場に拳を振り上げるも軽々と捕えられた。離せ!と暴れれば。
    「自分のことを知りたくは無いか?」と問われ動きを止めた。事実自分は何故こうなのか、これからどうなるのか知りたいと思っていた。
    「我と共に来い。悪い様にはせん。」
    その言葉に沈黙し、逡巡する。
    ─ここで断ればもう機会は無いかも知れない。
    「....わかりました」小さく返事を返した。

    それから世話になった農家の主人、学校の教師たちに別れを告げ身辺を片付けた。
    吸血事件に関しては本人たちの記憶がない事、命に別条がない事で有耶無耶にされた。予測でしかないが、この目の前の男がなにかしら圧をかけたのだろう。

    ガラガラと馬車は新たな地へ向かう。

    自分の事を知ってもただ辛いだけかもしれない。それでもいい。
    リンクは過ぎていく風景をぼんやりと眺め、不安の滲むため息をこぼした。


    ____________________
    補足とか設定とか

    リン君もガノ様も吸血鬼だけど吸血しなくても普通の食事で生活できる血は嗜好品に近い。
    ただ、寿命が縮んだり影響はある。

    吸血鬼のリン君色々な地を放浪。吸血事件起こしては次の地に移動してる。

    ガノ様の一族は元々武力や戦略などに置いて能力高い人が多かった為その力で王族に代々仕えてる。だいぶ血が薄くなり、同族はほとんど居ない。

    ガノ様に噛まれると造血作用促す為に快楽成分打ち込まれるよ⭐︎
    だから噛まれると気持ち良くなるよ⭐︎


    紫煙について
    紙巻煙草状の魔物封じ的なやつ
    薬草やらなんやらを混ぜてある
    煙で拘束して、時間経過すると消えます。
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