午後五時。ここのところビデオ屋業は妹に任せがちになっていたけれど、今日は妹が映画好きの友人に誘われて話題の新作映画を観に行くということで、久しぶりに店のカウンターに立っている。二人は僕にも声をかけてくれたのたが『全エリー都が戦慄!』の謳い文句を聞き、慎んで辞退させてもらった。彼女たちのことだから、上映後はハンバーガーをお供に映画の感想を言い合い、帰りは遅くなることだろう。つまり今夜の献立の決定権はすべて僕の手中にある。
何を食べようか、と考えながらカウンター越しに外を眺めていると、突然の雨が窓を叩き始めた。天気予報では夜まで降らないと言っていたけれど、新エリー都の天気はホロウの内部構造と同じくらい変わりやすい。店先に出す傘立てを準備していると、今度は見知った顔が店の扉を叩いた。
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