巨大水槽は眠らない 潮風に吹かれながら、セスはよく冷えたコーヒーを口に運んだ。カフェの二階にあるテラス席からは、砂浜の様子がよく見える。フェスは終わってしまったというのに、その興奮冷めやらぬ観客たちは未だ会場に残りドリンクを片手に語り合っていた。ビーチを行き交う人々を眺めていると、その中には見覚えのある顔が何人もいることに気付く。あの夜、ポートエルピスで見掛けた顔触れだ。
つい数刻前にセスをファンタジィリゾートへと誘った朱鳶は『最近何か悩んでいるでしょう? たまには息抜きも必要ですよ』と言っていた。上官の誘いを無下に出来ず付いてきたセスだったが、その朱鳶をこの場所に誘ったのが他でもないセスの悩みの種であることは知らされていなかった。
4960