いつからだろうか、青年期までは特に違和感はなかったはずだ。元より人から褒められることの多い容姿だったから、その延長線だろうと思っていた。ずっと僕の隣を歩いていた潮とは違う速さで時間が流れていることに気づくのに、数十年かかってしまった。僕は、他の人よりも随分と歳を取るのが遅いらしい。潮の額にシワが刻まれ始めても、僕は高校生の頃となんら変わりなかった。次第に周りは気味悪がり始め、僕の容姿をもてはやしていた人達はどこかに消えていった。けれど、潮は変わらず僕の隣に居てくれた。むーちゃんはむーちゃんだからと笑っていた。僕も笑った。
僕は、社会との関わりを最小限にして宇宙の研究に没頭していた。伴侶はいないが、それでいいと思っていた。僕はただ見届けることしか出来ない。一緒に同じ歩幅で生を歩むことが不可能だから、辛くなるだけだ。
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