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    RAI

    @r1_0n_

    物置部屋

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    RAI

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    寿命差のあるむう
    頭空っぽにして書いたので頭空っぽにして読んでください。これはssではなく壁打ち

    いつからだろうか、青年期までは特に違和感はなかったはずだ。元より人から褒められることの多い容姿だったから、その延長線だろうと思っていた。ずっと僕の隣を歩いていた潮とは違う速さで時間が流れていることに気づくのに、数十年かかってしまった。僕は、他の人よりも随分と歳を取るのが遅いらしい。潮の額にシワが刻まれ始めても、僕は高校生の頃となんら変わりなかった。次第に周りは気味悪がり始め、僕の容姿をもてはやしていた人達はどこかに消えていった。けれど、潮は変わらず僕の隣に居てくれた。むーちゃんはむーちゃんだからと笑っていた。僕も笑った。
     僕は、社会との関わりを最小限にして宇宙の研究に没頭していた。伴侶はいないが、それでいいと思っていた。僕はただ見届けることしか出来ない。一緒に同じ歩幅で生を歩むことが不可能だから、辛くなるだけだ。
     潮は個人経営のケーキ屋を構えている。自分に出来ることを見つけて、それを活かして今を生きている潮はとてもキラキラしていた。今でも試作品などは僕に一番に食べさせてくれるし、誕生日やバレンタインデーなどには盛大に振舞ってくれる。こうしていると、昔と変わらない気がするが、現実は残酷だった。
     ◇
     生まれてから70年ほど経った頃、いつものように模型いじりに勤しんでいたら、普段沈黙を決め込んでいる電話が突然鳴り出した。誰からだろう、知らない番号だ。普段人から電話なんて来ないので一旦無視しようと思ったが、どこか胸騒ぎがして、恐る恐る電話をとった。
    「もしもし。」
    「あ、こちら輝矢様のお電話番号でお間違いないでしょうか?」
     声を聞いても、誰からか分からない。だが僕のことを知っているようだ。
    「はい」
    「実は久楽間様の容態が急変しまして、ご家族の方にご連絡をと思ったのですが、連絡先に書かれていたのが輝矢様のお電話番号のみでして…」
     そこまで聞いて僕は走り出していた。病院の名前を聞き出し一目散に走っていった。年齢的には70をとうに過ぎているだろうが、あいにく僕は30代と変わらない身体をしているため数十分走ることくらい余裕だった。病室の扉を開けるとたくさんの管に繋がれた潮が横たわっていた。最近と言ってもここ1ヶ月適度会ってなかっただけなのに。変わり果てた潮の姿を見て絶句してしまった。
    「どうして…」
     正常に働かない頭を振り絞って声を出した。潮は力なく笑った。
    「黙っててごめん。ちょっと具合悪くなっただけだから。」
     こんな時にも潮は強がる。ベッドにすがりついて、ようやく聞こえるような声しか出せないくせに。何も言えないでいる僕に潮はそっと手を差し出した。
    「ねぇ、今なら触れられるよ。痛みも何も感じないからね。」
    「あ…あぁ…」
     僕はただただ涙を流しながら潮の手を握るしかない。僕と違ってシワシワだが、昔と変わらない温かさが、そこにはあった。声が涙に飲み込まれてしまう。言いたいこと、沢山あるのに。
    「…うーちゃん、僕は…うーちゃんの、生きる理由に…なれただろうか…」
     必死に涙を堪えながら、やっとの思いで口にした言葉は僕がずっと考えてきたことだ。うーちゃんは最後の力を振り絞って握っていた手を強く握り返してくれた。返事はなかった。けれど多分それが答えだ。僕は本当の意味で独りになってしまった。うーちゃんはようやく家族に会えるんだ祝福しなければ。
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