早朝仕事の日に限り🎲が現れない。
連絡も取れないため仕方なしに南雲のマンションへ向かった。
訳あって持っているマンションの鍵で部屋に入ると、カーテンを閉め切った広い部屋の中で僅かに寝息が聞こえてくる。丸まって眠る🎲と電源を切り放置されたスマホと閉め切った遮光カーテン。こんなん起きる気ないやん……とボヤきながら、無駄に広い部屋の無駄に大きい窓へ向かう。ちょうどいい日差しが出てきた頃だ、ひとおもいに開けてやろう、とカーテンに手を伸ばすと後ろからくぐもった声。振り向くと固く目を瞑った南雲が居る。
その姿を見て、ある日の会話を思い出した。
あれは、ふと零してしまった自分らしからぬ問だった。
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『寂しないん』
『え?寂しいって何が?』
『……いや、あんな高くて広いだけのマンションに1人は寂しい…は無いとしても落ち着かへんやろ』
『そうかな〜住めば都だよ〜?そもそも僕休日はどこにも行かないしー誰にも会いたくないしー…あっ、神々廻は別ね?『それ今いらんねん』…それにあそこは、夜が近いから』
『は?夜?』
『っていうか神々廻〜?そんなこと聞くって事は僕と一緒に住みたいとかそういう』
『なわけないやろ!!』
『冗談じゃん〜』
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『夜が近い』
とはどういう意味だろうか。
南雲という男は分かりやすいようで分かりづらい。なんせ他者に見て欲しい姿を見せるのが上手い男だ。嘘も誠も紙一重に存在している。
そこまで考え、馬鹿らしくなった。
カーテンに伸ばした手を引っ込め、南雲の横に横たわる。
仕事は…まぁええやろ、どうせもう間に合わへんし。全部南雲が悪い。ここで俺が寝ても南雲が悪い。そういうことだ。
ふと、目に入ったのは数独の本だった。
あいつこんなんもするんや…。ますます南雲という男が分からない。
………
いや待て、まさか数独のやりすぎで寝坊しているだけか?『朝』起きれない理由を『夜が近い』なんて意味深に言ってるだけちゃうか?
どうせこの問も本人に聞いても的を得た回答は得られないだろう。
南雲のせいでぐちゃぐちゃな思考になってきた。分からない、この男が。
シンプルがええ…シンプルが……あぁ、そうか
「分かるまで一緒に居ればええんや…」
ぽつりと呟いた声は広い部屋の中に消えたが、いつの間にか2人分になった寝息は部屋の中を満たしていた。