「ところでお前ってまだ彩子のこと好きなの」
「まだってなに。現在進行形ですけど」
「ほんとかそれ?」
「は?なに?どういう意味」
「その割に全然だよなー」
「なにがスか」
「メシ誘うとかそういうの全然ねーじゃん」
「いやだって断られたら嫌じゃん。なにメシ誘うって。奢るほど金ないし。高校生がメシ誘わないでしょ」
「チケット余ってるから映画観にいきませんかとか」
「ないない。余ったチケットなんかないし、ちゃんと誘ってちゃんと買うし」
「誘ったことあんの」
「ないけど」
「そんなんだから進展しねーんだろ」
「ほっとけよ。じゃあアンタはどーなのそういうのあんの?」
「まぁ俺だったらな、速攻でデート誘うとかする」
「モテる男は言うこと違うね」
「様子は見るけどな。だいたい嫌われてねぇことがわかればオッケー。別にモテてねーけど」
「自信満々でいいことっすね〜」
「自信はねーけどどうにかしたいと思うだろ」
「そのペースは人それぞれってことで」
「いやお前彩子なんか死ぬほどモテるぞ」
「見りゃわかりますよ」
「お前がチンタラやってるうちに取られちまうぞ」
「彩チャンはそんな安い女の子じゃないんでー」
「お前、彩子が誰からも告られずにひとりでいるとでも思ってんのか?なわけねーから」
「なに、なんで説教されてんすかオレ」
「ほんとに恋愛感情あんのかねそこに」
「なんなんですか?」
「可愛いと思ってるだけじゃねーの。犬とか猫とかと一緒でよ」
「いや…いやいやちょっと待ってさすがにそれはなくない?」
「顔だろ?要は」
「別にそれがキッカケでもいいでしょ。顔だけじゃねーし中身も最高だし」
「キスしてーと思う?」
「はっ?もうやめよこの話」
「なんかもう汚しちゃいけねーもんみたいになってねぇ?」
「それのなにが悪いわけ」
「アイドル的な感じで好きなのは恋愛とは別だろ?」
「めんどくさ。なに?彩ちゃんのこと好きなの?」
「いや、俺が好きなのは宮城だけど」
「は?」
「だからよ、俺とメシ行かねー?」
「…オレが彩ちゃんのこと好きって話はどこいったの」
「俺の中ではそんなことどうでもいいんだよ」
「よくねーっしょ」
「別にオメーが誰のこと好きでもそんなの諦める理由になんねーから」
「諦め悪いとかじゃなくてそんなのただの横暴だし」
「な、メシ行こうぜ」
「こないだ吉牛行ったよね」
「行った」
「あれはデートだったの?」
「あれはデートだったろ」
「…え、ちょっと待って」
「な、メシ行こうぜ」
「だから毎回謎に奢ってくれてるんスか?」
「謎解けたな」
「……へぇ〜」
「メシ行こ」
「ここでオレがいいよって言ったらデートになっちゃうでしょ」
「俺は速攻でデート誘うっつったよな」
「言ったけど待って、は?待って怖い」
「チケット買ってくるから映画行かねー?」
「ちょっと黙って…」
「お前なに系が好き?俺はホラー以外なら割となんでも」
「ガンガンくるじゃん」
「もうちょいで落とせそうだから」
「うっそだ。え?落とせそうってなに?マジで?落とせそうとか思われてんの?落ちねーから全然」
「ウソつけ顔真っ赤にしてよォ」
「もーマジ意味わかんねえ!」
「オラ、」
「触んな!」
「ははは!」