コンセプトリング「大学の同期のやつがよ、なんか最近付き合って1年記念とかで彼女とのペアリング買ったらしくて、普通のシンプルな輪っかのやつ。そんでお前って指輪とか欲しいタイプ?」
「え、なんですか?」
「は?だから指輪とか欲しいのかって聞いてんの」
「…どうですかね、指輪したままバスケしてるやつ見たことないですけど」
「確かに。高校だと学校につけていくのも微妙だよな。そいつも部活で指輪できねーからネックレスにしてるとか言ってさ、だったら最初からネックレスにすりゃいいよな。そもそも高校生とか大学生で指輪ってなんだよって感じじゃね。どーせすぐ別れんのにな、あいつら。テンション上がって買っちゃうのかね」
「欲しいのか聞いときながらなにそれって感じですけど、その人達1年続いてるじゃないですか。つかオレらもすぐ別れるって言いたいんスか?」
「そうは言ってねぇだろ、絶対別れないなんて誰もわかんねぇだろ高校大学のうちによ。超サイクルはえーやつらとかいるじゃん。3ヶ月とか」
「それでも一緒にいようねって約束するためのものでしょ。三井サンそういうの向いてないよ。ロマンチスト向けだよ指輪なんて」
「オメーはロマンチスト寄りだよな、欲しい?指輪」
「アンタの中で無価値なものを欲しがるほどバカじゃないんで。いらねーっす」
「いやお前とだったら大事にするぜ、バスケしてるときも外すんならほとんどつけてる時間なんてねぇけど、ネックレスとかにして身につけるよ」
「だったら最初からネックレスにしとけばいいんじゃないですか?」
「ネックレスにしたってバスケの時外すよなぁ」
「じゃあダメじゃないですか。この会話意味ないっすよ」
「指輪って相場いくらぐらいなんだろうな。そんな高くても重いよな」
「知らね。ひとり5千円とか1万ぐらいじゃないスか」
「マジか。たっけー。割り勘しよーぜ」
「ペアリング割り勘って意味わかんないスね。いきなり分割するんスか。縁起悪い」
「分割ダメならオレらの場合どっちが出すの」
「……え、買う感じになってんの?」
「あれ、いらねぇの?」
「全然いりません。え、欲しいの?」
「…いや宮城がいらねぇなら別にいいけど」
「…え、なに」
「ん?」
「…三井サン、いいです、そういう恋人っぽくしようとするの、いいです。いい、いい」
「なんで」
「そういうなんか、普通のカップルがよくやってるやつみたいなの、いらないです」
「なんで」
「………ピンとこないんで」
「どういうこと?」
「うーん…いや…なんか、なんとなくです」
「…ふーん、まぁいいや」
「…ごめんなさい」
「なにが」
「気分悪くしたんならごめんなさい」
「別に。あやまることねぇよ」
「……欲しかったんですか」
「つーかお前が、やたらオレらがなんつーか普通じゃねぇこと気にしてる感じあったからよぉ、普通に、普通の恋人って感じのことしようかなと思っただけで、まぁ深い意味ねぇんだけどよ」
「思ってないです。普通じゃないとか思ってないよ」
「思ってるって。だって外で手繋いでねぇじゃん」
「そー…それはだってさぁ」
「だってなに」
「そんなの…周りの目とか、照れるからに決まってんじゃん、つーかなに?繋ぎたいの?」
「うん」
「えっ?」
「繋ぎてぇよ。めちゃくちゃ繋ぎてぇ。全然イチャイチャしたいしなんなら毎回触りたくてしょうがねぇときある。どうすんの?どうしたらいい?」
「は?言ってよ!」
「隣歩いてるだけで距離あけてくるやつがよく言う」
「アンタがぶつかりすぎなんだって!めっちゃ肩ぶつけてくんのなに?あれ?ヤンキー時代の名残?肩でぶつかってカツアゲとかしてた?」
「スキンシップだろ。手がダメならもう肩でいくしかねぇだろ。ヤンキー時代の名残ってなんだよバカにしてんのか」
「めちゃくちゃバカにしてます。わかったもう、じゃあ手繋ぐ。腕組んで歩こ」
「腕組むのはちょっと…」
「指輪も買います。欲しいです。欲しくなりました今」
「なにテンションあがってんだよ」
「みんなこうやってテンションあがってお揃いのもん買うんだ…今ならわかるね。めちゃくちゃ欲しい」
「オレはテンション下がってるから全然欲しくねぇ。あんなのただの金属だろ」
「ただの金属です。でもお揃いだったら、超意味ある金属になります」
「テンション上がって買った身に付けないお揃いの金属な…テンション上がった時だけつけるんだろうな…」
「見るたびにお互いのこと思い出して笑いますよ」
「……なんだそれ、しあわせっぽいな」
「ぽいっスよね。指輪欲しいス」
「………はい」