騎士パロマシュレイ「どこ行きやがった!探せ!」
普段は静まり返っているこの森が、今夜はやけに騒がしい。動物たちもただならぬ様子になんだなんだと影から人間たちを見つめていた。
ここは白の国と○○の国の境に位置する森。
古くから何かと対立することが多かったふたつの国が、大きな争いをせずにいられたのはこの森の存在が大きかった。
ここは不可侵の森。争いなど起こしてはならない。
だからレインは油断していたのだ。
「はぁ……クソっ、!」
レインは己の足に刻まれた深い傷を見て苛立ちが隠せなかった。
遡ること数刻、レイン率いる少数の騎士たちは白の国の王であるライオの使いで○○の国へ向かっていた。あともう少しで到着するという時に奇襲にあったのだ。その数は少なく見積ってもこちらの倍以上。レインはなんとか部下たちを逃がそうとし、深手を負ってしまった。
これは明確な宣戦布告。数百年保たれてきた均衡が崩される時がきたのだ。
今ごろ国は混乱に陥っているだろう。部下たちは国まで戻れただろうか。
思っていたよりも多い出血と限界を迎えた体力のせいでレインは意識が朦朧としていた。周りには自分を探す敵国の兵士。もう助からないだろう、そう覚悟した時に浮かんだのは弟の顔だった。臆病で力も弱い、だが誰よりも思いやりのある優しい弟。これから来る混乱の世に、そんな弟を残していくのがやるせなかった。
「フィン、フィン……すまない……」
そしてとうとう、レインの意識は暗闇に落ちていった。