運命の出会いはあっけなく 真っ白な世界に立っていた。足跡一つない雪原は果てが見えず、空は厚い雲に覆われ未だ雪を降らせ続けている。轟轟と風が唸り、体温が奪われていく。一歩足を踏み出せば、きゅうと独特の感触と共に足が雪に沈み込む。二歩、三歩と逸るように足を進め、気が付けば走り出していた。自分が何を目指して進んでいるのか分からない、けれど見つけなければいけないモノがあることだけは知っていた。柔らかい雪の上は走りにくいはずなのに息が上がることはない。
「こ……としょ……の!」
微かに自分以外の誰かの声がした。吹き荒ぶ風に流されてはっきりと聞こえない。男なのか女なのか、若いのか年老いているのか、それすら分からないというのに、声の主は自分の探し求めていたモノだと確信した。
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