融けない淡いあまやかさ 警視庁捜査一課へ捜査関連資料を届けに行くのは、専らマトリの下っ端である私の役目だった。
今日も仕事の昼休憩をいただく際に、関さんから申し訳なさそうに頼まれて二つ返事で了承する。最近はデスクに齧りついている時間が多く、運動不足になりがちな身体を動かすには丁度いい。戻りは遅くなっても構わないからと、課員への寛大すぎる気配りをしてくれる上司に深く頭を下げて、庁舎から警視庁への道を徒歩で向かう。
「耀さん? 朝から見てないなー」
「昨晩から明朝にかけてはいましたよ、恐らく仮眠を取りに行ったのでしょう」
服部班のメンバーたちは事もなげに激務の片鱗を口にするので、思わず苦笑してしまう。
「そうですか、関さんから頼まれていたものだったので本人に直接渡したかったのですが……。思い当たる場所を知りませんか?」
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