無題「ここに居たか、ダニエル」
あの戦いで負けた僕たちは漏れなく全員死んだ
死んだ後のことなんか考えてなかったけどお腹は空くし眠くはなるから静かに過ごせる場所を探した
住処を探しているとシュラに出会い、2人で暮らすことになった。
僕は静かに過ごすのが好き…だけどシュラはどうだろう。
僕と違って家族とのコミュニケーションは取っていた…から、僕と一緒にいてもきっとつまらないだろう……
早く家族を探して…
「ダニエル、聞いているか?」
「…ごめん、考え事してた」
「そうか。今日のご飯はシチューだぞ。一緒に帰ろう」
シュラが差し伸べた手を取って立ち上がり、地面についていた尻を手で払った
「星が綺麗だな」
「…うん」
会話が続かない
僕だけ昔からこうだ…周りが話しかけてくれても会話の続くような返事をすることができない
だから会話の中に入るのが苦手だった
けれどそんな僕をシュラはずっと気にしてくれていた…
僕が戦いにおいて価値のある人間だったから
それはわかっている…それでも僕は気がつけばシュラのことを好きになっていた
家族で男の僕がシュラに僕の思いを伝えたらきっと一緒にいれなくなる……
気にもしてくれなくなる…それが怖くて墓場まで持っていこうとした
「……エル、ダニエル」
「……なに?」
「着いたぞ。早く入ってご飯にしよう」
シュラは今でも僕を必要としてくれている
何故…戦争はもう終わった
家族を探すため……?1人で探すより2人の方が分担もできるからな…
「美味そうだろ?見様見真似で作ったんだ」
嬉しそうに僕の前にシチューが入ったお皿を置く
シュラは家事もできたんだ…
僕とは全然違う…こんな僕がシュラを好きになるような資格は無かったと思い知らされる
シュラにはもっと良い人が傍にいるべきだ
「…美味くなかったか?」
黙々と食べているから心配をさせてしまった
いつもなら周りが喋ってくれるから僕一人くらい喋らなくても気にはならなかったが今は僕と二人…
何か喋らないと、と思っても何を話せば…
「美味しい…」
「なら良かった。おかわりもあるからな」
「……シュラはどうして僕に気にかけてくれるの」
「え」
何を話せばいいのかわからず焦ったからか変な質問を投げてしまった…
「そんな質問、答えは1つしかないだろう?」
「家族…だから?」
「勿論それもある」
「…戦いにおいて必要な戦力だから」
「戦いはもう終わっただろう」
ははは、と笑うシュラが立ち上がり僕の隣に来て
「好き、だからだ。家族としてでも無い、戦いにおいて必要な存在だからという訳でもない。ダニエルだから好きなんだ」
と耳元で囁かれた
シュラの思考を読むと僕がシュラを好きになる前からシュラが僕のことを好き…に……
「し、知らないよ!!こんなシュラ!!」
「今まで隠していたからな。墓場まで持っていこうと思っていたが死しても尚、こうしてまたダニエルと出会うことができ、好きという気持ちは変わらなかった」
「……///」
「ダニエルはいつから俺の事を好きになったんだ?」
「教えない…」
「勝手に思考読みしておいてそれはないだろう?言わないならベッドで聞かせてもらおうか」
「…言う前に寝る」