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    露草490

    隔離病棟

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    露草490

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    ※楓応、知的好奇心が先んじてしまう応星さんの話
    ※冒頭が全て、ぬるい緊縛描写

    #楓応

    好奇心猫をも殺す「なあ、突然で悪いんだが、ちょっと俺を縛ってみてくれないか?」
    「……は?」

     この男はまた突然と何を言い出したのだろうか。丹楓は隣に座る応星の突拍子もない発言に対して思わずと低い声を溢した。応星とは今の今まで他愛のない雑談をしながら盃を交わしていただけの筈なのだが、その状況から何がどうしてそんな提案をするに至ったのか、まるで理解ができなかったのだ。
     しかし普段の応星の行動パターンから察するに、これは先の会話の流れからそう成った、という訳ではなく、何かしらの端的な要素がこの男の中にある創作意欲という琴線に触れてこうなってしまったのだろう。そこまでを察した所で丹楓は項垂れたように指先で眉間を押さえた。
     思い起こせば約束の時間になっても工房から出てこない応星に痺れを切らし、机に齧り付いて何やら呻いていた応星をその自宅にまで引き摺ってきたのは己である。

    「応星。酔っているのは解るが、日頃からもう少し事を順序立ててから話せと言っているだろう」

     丹楓は半ば呆れながらも自身が持っていた盃を盆に置くと、流れるような所作で応星の手にしていた酒をもひったくり、同じくしてそれも盆へと戻した。酒精に目元を染めた応星が恨みがましくこちらを見てきたが構うことはない。

    「あ~……ああ。そういやそうだな。まあこれはお前だから話すんだが、十王司から新しい拘束具を設計して欲しいっていう依頼が来ててさぁ。旧式の手枷は大抵その重量で対象の行動を制限する物なんだが、それだと意図せず対象の身体を傷つけたり、負担から後遺症が残ったりするだろ? それじゃあ長期の禁錮に向いてないってんで、今回はもっと拘束そのものに重きを置いた代物を作って欲しいらしいんだが……今一つ良い案が浮かばなくてなぁ」

     だからいっそ考えるよりも感じろの方向性でいくかと。普段よりも緩く間延びした声で突拍子もない事を述べながら、応星は既に周辺の戸棚やら何やらから縄だの様々な繊維でできたベルトだのを引っ張り出し始めている。
     だから何だ。何故そうなった。丹楓は応星の説明を聞いて尚もそういった言葉が浮かび応星を睨んだが、探究心が服を着て歩いているようなこの男の事だ、そんな過程は最早どうでも良いのだろう。恐らくこれ以上は追求しても無駄だ。

    「ほら、お前っていつも帯やら何やらがややこしい服着てるし、何なら尋問とかも得意そうだしさ、俺よりもそういうの上手いだろ?」

     へらりと笑いながら支離滅裂な事を宣うのは酔っ払いの特徴なのか、それともこの男の偏見によるものなのだろうか。黙って聞いていれば好き勝手言ってくれる。

    「馬鹿を言うな。それになぜ余が了承する事を前提に話を進めているのだ」
    「ん~? でもそうやってさ、何だかんだ言いつつまた俺の我儘を聞いてくれるんだろ。世話好きの龍尊様は」

     ふ、と顔を綻ばせる応星の面差しに、ああ、この男は本当に狡い男だなと思う。酔っていると殊更たちが悪い。普段の頑なさが嘘であるかのように、ほんの僅かな相手にのみ見せるその表情。それを見たさに甘やかしているのだという事を、応星は気が付いているのだろうか。
     一度懐に入れたらとことん甘いのはお互い様で、懐いた相手にのみ見せるのだろう無意識下の隙に弄ばれている。それはまるで熱病の兆しのようで、躱すのも儘ならない無様は本来許しがたいが、もうそれすらも悪い気がしないのだから重症である。
     丹楓はかねてより、この応星という男を好いていた。

    「はあ。その願いを聞いてやっても良いが、人の手を煩わせておいて対価もなしとは言わせぬぞ」
    「もちろん報酬は払うさ。今回は何が良いんだ? また飾り細工か、それとも新しい奇物がいいか?」
    「いや、まだ決まってはおらぬが、願いには願いを返すというのが道理というものだろう」
    「そうさなぁ。ま、決まらないのなら一つ借りって事にしておいてくれ」

     そういったやり取りをする間にも、応星はまるで童子のような無邪気さで己を拘束するための道具を棚から取り出しては並べている。
     果たしてこの男は今、とんでもない事を仕出かしている自覚はあるのだろうか? 元より応星の頼みを断るつもりは無かったが、ここで断れば他所へ頼みに行きかねないその純粋さには僅かな苛立ちすら感じる。

    「ほら、煮るなり焼くなり好きにしていいぞ」

     そう言って応接間の長椅子に身を投げ出そうとする応星に嘆息しながらも、そこでは身体を痛めると説き伏せて寝室へと誘導すると、手慣れた様子で布団を広げた応星がその上へと座り込んだ。
     応星宅は基本的に制作のための資料やら模型等が幅を利かせているのだが、寝室だけは本当にただ寝るだけの部屋のようで物に乏しい。そんな空間の中で、薄着となった応星の傍らに持ち込んだ縄やらベルトやらが置かれているという様は、何だかやけに倒錯的で淫猥に見えた。

    「では手を此処へ」

     そうして声をかけてやると、従順に前に揃えて両手を差し出してくる応星の姿に目眩がした。本当に良いのか、これから何をされるのか理解しているのか。そういった声を掛けてやるべきなのは解っているのだが、恋情からくる下心がそれを躊躇わせる。

    「へえ、器用なもんだなぁ」

     応星の呑気な声に僅かに歯噛みしながらも、頼まれた事とはいえ応生の肌を傷つける事は不本意なれば、丹楓はしっかりとした縄ではなく鮮やかな朱色の紐を選び取ると、両の手首を一括りにしてから編むようにそれを巻きつけていった。見様見真似だが、飾り結びの要領で短い紐を継結んでいき、その朱色が肘にも及ぶ程になった所で、それを一度引き結んでやる。

    「どうだ、何か解ったか?」

     ふつふつと湧き上がる感情を押し殺しながら顔を上げれば、興味深そうにまじまじと自身の腕を見ている応星の様子に眉根が寄る。

    「うーん。こうやって肘までぴったりくっつけると大分窮屈にはなるが……ほら、これだとまだ肘が曲がるし、拘束にしては弱いんじゃないか?」
    「そうか、ならこれではどうだ」

     応星が伸ばしていた腕を自身の方へと一度曲げて見せたのを良いことに、丹楓はその一瞬の間を以てその手首と首とを更に一絡げに括ってみせた。拘束は呼吸が苦しくない程度のものに留めたが、首の前で手を合わせた状態で固定されてるその姿は、どこか切実な祈りを捧げているようにも見えて悩ましげである。

    「確かにさっきよりはキツいな。でもこれだと首枷と手枷とを一緒くたにした従来品と、さして拘束力に差が無いよな……」
    「そうか、ならば矢張り腕は後ろに回すのが良いだろう」
    「やっぱりそっちの方が良いかぁ。前で上手く固定する方法があれば負担が少なそうなんだが」

     全く、ここまでされて尚も分析を続けようとする応星のこの態度は、いっそ褒めてやるべきなのだろうか。
     丹楓はため息混じりに編みあげた紐をするすると解くと、今度は細めの縄を手にして応星の背後へと回り込んだ。そしてそのまま腕を引いて縄を掛けようとしたのだが、そうする前に応星がすいと両腕を後ろへと回してきた事に、丹楓は自然と口角が上がるのを止めることができなかった。こんな無垢な信頼があるものだろうかと目を細め、この愉悦を溶かした表情を応星に見られなかった事だけが幸いであったと薄く笑った。
     ぐるりと、先程よりも少しだけきつく朱色を捲きつける。そういえばこれらの縄や紐やらは、本来何かの細工に使うために用意されていた物なのだろうか。靭やかで手触りの良い縄はどれも色鮮やかで、応星の白皙の肌によく映えて美しいと思う。己の中にこういった嗜好は微塵も無かった筈なのだが、腹底に沈めていた嗜虐心をざらと撫でられているような心地でどうにも落ち着かなくなってくる。
     ああ、それもそうだろうか。目前の愛しい男の声が、無遠慮にそれを撫でてくるのだから。

    「ったんふ、う。悪い……なんかこれ、苦しくは、ないんだけどさ」

     後ろ手に手首を纏めるだけに飽き足らず、二の腕同士を背中側に引き寄せるかのように縛り付け、それらを一絡げに引き結んだ。喉元や胸部までに及んだ縄は、幾重にも束にすることで食い込みを抑えてあるが、もしかしたら暫くは跡が残ってしまうかもしれない。

    「苦しくないのなら、何だ」
    「いや、なんか……」

     は、と悩ましげに息を吐く音がして丹楓は応星の顔を覗き込んだが、苦痛を感じたかどうかの懸念は杞憂だったようだ。熱を帯びた淡藤色が水膜を張る様が此れ程までに美しいとは、こんな事でもなければ終生知らなかった事だろう。
     浅い吐息を溢す応星が身じろぎをする度に、極彩色が柔い胸肉に僅かに食い込む。

    「……っその、とにかくダメだ。丹楓、もういいからさ。な、これ一回解いてくれよ」
    「先程までの威勢はどうした。それにまだ脚の方が残っているだろう?」
    「っおい!待っ──」

     腕を拘束されているせいか、体ごと擦り寄せて懇願してきた応星の肩を後ろへと引くと、その身体はいとも容易く丹楓の腕の中へと倒れ込んだ。応星は反射的に脚をばたつかせて抗議していたが、丹楓によって膝と足首のニ箇所を太いベルトで留められてしまうと、途端に身を丸めて静かになってしまった。

    「気に入ったのか?」
    「いるわけがないだろ……」

     そう言ってもぞもぞと身を捩って逃げようとする応星の身体を後ろ抱きに抱き寄せると、丹楓は龍尾を使って両脚を一巻きに絡め取り軽く締め付けた。

    「これでもう動けぬな。感想はどうだ、満足したか?」
    「……ああうん。まぁ何となく、解った、けど……」
    「けれど?」

     龍尾の先でするりと太腿を撫でてやると、途端に上がったやめろと言う声がいつもよりも弱々しく感じられて、優越を感じてしまった。
     どうやらこの朴念仁もようやっと己の現状に気がついたようだ。さて、では次に拘束のせいで否応なしに晒されてしまっているこの下腹部の兆しについては、指摘をしてやるべきか否か。

    「いや、そのさ……なんかお前相手だと変に安心しちまって駄目というか。何されても嫌じゃないから何か、こう……違うんだよなぁ……」
    「……は?」

     目前の贄をどう食らってやろうかと、そんな事を考え始めた不埒を叱咤する前に横から鷲掴まれて、丹楓は冒頭と同じく、そしてそれよりもさらに二層は低い声を溢す事となった。

    本当に、この応星という男はたちが悪い事この上ない。
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