事業に失敗しついには命を狙われるまでに追い込まれた没落貴族のサイトウ。
かつての領地だった森の奥まで逃げ込むが囲まれてしまい、(ここまでか…)と諦めながら背後の大樹に触れたその瞬間、大樹が強く輝き始める。
あまりの眩しさにサイトウが瞬きをした僅かな間に、背を向けた一人の男が目の前に立っていた。
木が琥珀を取り込んだような変わった斧を持ち腰から刀を提げる軍服の男は、振り返るなりサイトウに向かって人懐っこい様子でニッと笑いかける。
「お前をいじめるのはあいつらか?」
戸惑いながらも頷くと軍服の男は「わかった」とそう短く返事をしながら刀の柄に手を掛け、次の瞬間には敵の一人を切り落としていた。
抵抗する隙すら与えず場を制圧した男は返り血の一つも浴びず綺麗な姿でサイトウの方へと振り返る。
「あとは俺に任せとけ、ハジメ」
なぜ自分の名前を知っているのか。そんな単純な疑問を考える余裕もなく、サイトウはただ目の前の光景を目に焼き付けるしかない。
自分を殺そうとした奴らが目の前で殺された。恐ろしいはずなのに、それよりも神々しさが上回るのはなぜか。
木々の隙間から差し込む光に照らされて、男はどこか懐かしさを感じさせる顔で笑った。
っていう没落貴族の斎藤×山の守り神・永倉の斎永ファンタジーパロ
1️⃣は忘れてしまっているが森がまだサイトウ家の領地だった子供の頃に、同じ年頃の子供の姿をした8️⃣とよく遊んでいた。
父の事業開発で森を拓く話が持ち上がった時、大樹を切るのだけは嫌だと子供の1️⃣が反対して(その他の要因が大きかったが)話が立ち消えたため、森の守り神である8️⃣はずっと1️⃣に恩返しをしたいと考えていた。
父が共同出資者の友人に裏切られた挙句に多額の借金を背負わされ失意の内に亡くなった上、領地も全て奪われてしまう1️⃣。
家族の墓がある土地だけは、と権利書を持って逃げ出した1️⃣は命を追われ8️⃣が守る森へ逃げ込み…
人智を超えた力に警戒しながらも、8️⃣の協力があれば家族が眠る土地を守り抜く事が出来ると安心する1️⃣。
お節介でお人好し、世間知らずで向こう見ず。1️⃣からすれば馬鹿な事ばかりする8️⃣に最初こそ苛立っていたものの、親も友人も失って一人ぼっちになった1️⃣に友人のような親のような距離感で接してくれる8️⃣へ次第に心を開き始める。
時々土地を巡る諍いが起こりながらも何とか過ごせていたはずだったが、ある時敵に8️⃣の力の源が大樹にあると見破られてしまい…
「泣き虫だったお前が笑っていられるなら、何でもいいんだ、俺は」
「なんで分かんねぇんだよ、馬鹿……! 僕はもう、お前が居なきゃ笑えねぇってのに……っ」