プププビレッジにようこそ(マホロアがいろんな世界を旅する話)それは、フームたちがカービィと一緒にウィスピーウッズの森へと行く途中のことだった。突然、カービィが走り出してしまったのだ。
「カービィ!急にどうしたの」
フームとブンはカービィを追いかけ、ボロボロの衣服を身にまとった旅人が倒れているのを見つけた。
「ぽーよぉ、ぽーよぉ!」
カービィがゆすり起こそうとしているが、起きる様子がない。
フームは急いで近くにしゃがみこんだ。口元に手をやると空気の流れを感じる。息はあるみたいだ。ブンもフームを見習ってしゃがみ込み、その人の様子を見た。
「姉ちゃん、その人大丈夫か?」
「分からないわ。でも、生きてはいるみたい。とりあえず、城に連れていって医者に診てもらいましょう」
ブンはうなずくと、旅人を持ち上げようとする。
「ぽよ!」
カービィもブンを手伝うように体を支えた。
***
「ヤブイ先生、彼はどうでしたか?何か病気とかは?」
診察を終え、部屋からでたDr.ヤブイにフームは駆け寄った。
「とりあえず、命に別状はない。おそらく極度の疲労による気絶じゃ。しばらく寝かせておけば時期に目を覚ますだろう」
ヤブイは安心しなさい、というふうにフームの肩を優しくたたき、帰っていった。フームがほっと息を吐くと、隣で話を聞いていたブンは身を乗り出した。カービィも嬉しそうにポヨポヨしてる。
「よかった!な、姉ちゃん!」
「ええ」
ブンの言葉にフームは頷いたが、すぐに表情を曇らせた。
「けど、どうしてあんなところに倒れていたのかしら?しかも、極度の疲労状態で…不思議だわ」
「たしかに……。でも、いま考えても仕方ないじゃん。昼飯にしようぜ。起きたら本人から聞けばいいだろ」ブンは明るく言ったが、フームはまだ不安そうだった。しかし、昼飯という言葉にカービィが、
「ごはん~♪ごはん~♪」
と手を引いてくるので、昼食にすることにした。
***
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「ねぇ、パパ、ママ。今朝ウィスピーの森にいったら旅人が倒れていたの。それで、城まで運んで来たんだけど、起きるまで、城にいさせてあげてもいいかしら?とっても疲れているみたいだから……」
昼食の前にフームは心配そうな表情で、両親に事情を説明した。
「ああ。もちろん、パパは構わないよ。でも陛下はなんというか...」
パームはすぐに頷いたが、すぐに表情を変えそういった。
「そうねぇ、それなら、起きるまで陛下に内緒にしていたらいいんじゃない?さあ、さっさと食べましょう。せっかくのご飯が冷めちゃうわ。」
「それもそうね、パパ、ママ。ありがとう!いただきます。」
フームは手を合わせ食事を始めた。ワドルディたちが用意してくれた昼食はとても美味しそうだ。サクサクのパン粉で包まれたエビフライはいまだ湯気を上げていて、隣には新鮮な野菜が色鮮やかに並んでいる。小さなボウルには温かいポタージュスープが用意され、その匂いは食欲をそそる。
「それじゃあ、姉ちゃん、食べ終わったらお見舞い行こうぜ。食べ物とか持ってったら、匂いで目を覚ますんじゃねーの」
「ぽよ!」
すでに昼食を食べ始めていたブンは冗談めかしていった。カービィもブンの言葉に賛成するように元気よく声を上げる。
「そうね。そうしましょうか」
フームは、ブンとカービィに微笑んだ。その後、家族全員で食卓を囲んで昼食を楽しんだ。食事を終えた後、フームとブン、そしてカービィはお見舞いの準備を始めた。フームは、寝起きでも食べやすそうなフルーツと冷製スープにしたコーンポタージュを厨房からもらってきて籠に詰めた。
***
フームたちが、旅人を寝かせている部屋の扉を開くと、彼はすでに目を覚ましていたのか窓から外の景色を見ていた。
「あ、姉ちゃん起きてるぜ」
「よかった、目が覚めたのね」
すると彼は何かを呟いたが、小さくて聞き取れなかった。
「縺医▲縺ィ繧ュ繝溘◆縺。縺ッ隱ー溘Δ繧キ繧ォ縺励※繝懊け繧貞勧縺代※縺上l縺溘繧ォ繧、」
「なんて言ったんだ?」
ブンは彼に近寄った。フームもそれに続いて近づきそれから自分を指差し、ゆっくりとフームといった。ブンとカービィもフー厶のマネをして名前をいった。それからフームは旅人を指さしていった。
「あなたは誰?」
フームは努めて安心させるような笑顔で聞いた。旅人は、一瞬驚いたような表情をした後、フームとブンをしげしげと見つめて自分を指差しこう答えた。
「マホロア」
「マホロア?それがあなたの名前?」
フームがそう聞くと彼は頷き、言葉を続けた。
「菴螂ス游クェ犧ァ犧ア犧ェ犧扉クオ滕譜倣葺ク費シコンニチワ?」
それを聞いてフームとブンは表情を変えた。それを見た彼は話を続けた。
「ア、コレならわかる?ボクの名前は、マホロア。キミたちがボクを助けてくれたのカイ?」
「え、あ、そうよ」
フームは戸惑いながらも頷いた。そこにフームの後ろで聞いていたブンが口を挟む。
「なあ、お前、ここらじゃ見ない顔だし、旅人だろ?どこから来たんだ」
するとマホロアは少し表情を曇らせた。それから、何かを考えるそぶりを見せた後口を開いた。
「実はよくわからナイんだ。この間マデは王国にいたケド、目が覚めたらここに居たんダヨォ。ここはいったい何処なのカイ?」
マホロアはフームとブンを見つめた。その目は不安で揺れているように見えた。フームはそんなマホロアの目をしっかりと見つめ返した。そして言った。
「ここはプププランドのデデデ城よ」
すると、マホロアは驚いたように目を見開いた。
「プププランド!?……聞いたコトないヨォ。ズイブン遠くにマデ来ちゃったミタイ」
「来ちゃったみたいとは他人事ね。自分で来たんじゃないの」
フームはマホロアの言葉に怪訝そうに言った。マホロアは耳をぺたんと下げ答えた。
「実は旅の途中で災害に巻き込まれちゃったんダヨォ。デモ、それに巻き込まれたのはハジメテじゃないし、ドッカに飛ばされるとは思ってたけどサァ…」
「それで、あんなところに、あなたも大変なのね。」
フームは同情したように言った。そこへ騒がしい声が近づいてきた。
「ワシに内緒で客人を招くとは極刑ゾイ。この城は全てワシのもの勝手に部屋を使うなんて不敬ゾイ」
「そうでゲスね。陛下。まずは陛下にお伺いするが道理でげしょうね」
廊下のほうを見るとデデデとエスカルゴンがいた。
「げ、デデデ!」
「モシカして、彼がこの国の王様カイ?」
ブンは嫌そうに叫んだ。マホロアは小声でフームに聞いた。フームは小さく頷いた。
「ぽーよー、れれれ、ぽゆよ、ぽーよぉ」
そしてカービィは、楽しそうにデデデに纏わりついている。マホロアはベッドからおりて、軽く身なりを正すとデデデに話しかけた。
「ハジメマシテ、デデデ陛下。ボクはマホロア。イロイロな星を旅をして回ってる商人なンダ。今日はボクを助けてくれてアリガトウ」
マホロアは笑顔でお礼を言うと深々と頭を下げた。するとデデデは、さっきまでの勢いをなくしてその大きな手をパタパタさせながら戸惑ったように答えた。
「ん?おお……どういたしましてゾイ?」
「陛下!騙されてはなりやせんよ。そいつは何処から来たのかもわからない怪しいでゲスよ」
エスカルゴンの言葉にそれは確かにと思いブンとフームは頷いた。しかし、デデデは頭を上げたマホロアを上から下までまじまじと見ると感心したように呟いた。
「ほほう……なかなか見る目があるぞい。ワシにきちんとお礼を言うとは賢いやつゾイ」
そして、そのままの調子で続けた。
「気に入ったゾイ!お前を城においてやってもいいぞいっ」
「えっ」
エスカルゴンは驚きの声を上げた。デデデの発言を聞いたマホロアはエスカルゴンがさらに発言する前に答えた。
「エー!本当カイ。アリガトウ、デデデ陛下!ホントーに助かるヨォ。ソレならたくさん、サービスしなくちゃネ。陛下は何か欲しいものはあるカイ?」
「そうゾイなぁ、ワシはプププランドの大王。欲しいもんなんてなんでも手に入るから特にないゾイ。だが、どーしてもと言うのなら貢物を受け取ってやってもいいゾイ」
デデデはそういうと腕を組んで考え込んだ。マホロアはその様子を見て少し考えた後、口を開いた。
「ウーン、ソレならこの苗はどうカナ?ジェムリンゴの苗ダヨォ!」
そう言うとマホロアは苗を取り出してみせた。デデデはその苗をみると、嬉しそうにそれを受け取った。
「おおー!なかなか良いもの持ってるゾイ。エスカルゴン!ジェムリンゴとはなんだゾイ?」
デデデは尊大にマホロアに礼を言ったあと、小声でエスカルゴンに聞いた。エスカルゴンも小声で返す
「わたくしも知らないでゲス。あんた、知ってて受け取ったんじゃないの」
そんな二人の様子を知ってか知らずかマホロアは話を続けた。
「でも苗だけは、味気ないカナァ。ソウダ!ジェムリンゴも差し上げるヨォ。」
マホロアは、そういうと籠を取り出した。中には宝石のような果物が沢山入っていた。デデデの目が輝く。
「おおー!これはキレイだゾイ!やはりお前を城においてやるゾイ!」
「ククク!アリガトウ、デデデ陛下!」
そんな二人を見てフームたちは呆れて顔を見合わせた。
「エスカルゴン、歓迎の用意をするぞい。今日は宴だぞい。ガーハッハッハ」
デデデそう言うとエスカルゴンを引きずって出ていった。
「ぽーよ?」
カービィは引きずられるエスカルゴンを心配そうに見ている。マホロアは、そんな様子に苦笑するとフームたちに話しかけた。
「改めてキミたちの名前を教えてクレナイかな?ボクはマホロア、ヨロシクネ!」
「私はフーム。大臣の娘よ。こっちは弟のブン、あそこにいる子はカービィよ。こんな見た目だけどとっても強いのよ!」
「ぽーよ、ぽよ!」
フームの言葉にブンは「よろしくな!」と手を差し出した。マホロアはその手を握り握手をした。
「フームにブン。それにカービィだネ?ボクを助けてクレテ、ほんっとーにアリガトウこれからも仲良くシテくれるとウレシイナァ」
マホロアは頬を赤らめ、二ヘラと笑いながら言った。
「もちろん!よろしくね。マホロア」
フームは笑顔でそう返し握手を交わした。ブンもそんなマホロアに笑いかけて言った。
「よろしくな!マホロア!」
「ぽーよー、なー」
カービィも嬉しそうに近寄ってきた。
***
夜になると、デデデが用意した歓迎の宴が開かれた。中庭にワドルドゥ隊長とたくさんのワドルディたちが集まり、豪華なディナーを運んでいる。それは賑やかなものだった。料理はどれも美味しそうなご馳走ばかりで、フームもブンも思わず舌鼓を打った。
「まさかデデデがカービィまで招待するなんて!」
「だよなー。ここまで上機嫌なデデデは珍しいぜ!」
「ぽよーよ?」
楽しそうにマホロアと話しているデデデを見ながらブンは言った。そこへメタナイト卿が近づいてきた。
「フームにブン。楽しんでいるかそれにしても陛下がここまで上機嫌になるとは、彼は何者だ?」
「こんばんは、メタナイト卿。彼はマホロア。事故でここに来た旅商人らしいわ。でも、デデデが気に入っちゃって城に住むことになったの」
フームの言葉にメタナイト卿は少し驚いたようだった。
「ふむ、事故で…か。ありがとう、フーム。ではな」
メタナイト卿はその場を去っていった。その後ろ姿を見みたブンがよって来て言った。
「ねーちゃん、メタナイト卿なんだって?」
「なんでないわ。マホロアのことを聞いてきただけよ」
***
歓迎会がおわり部屋へと帰る途中、マホロアは考えていた。うまいことデデデ城に住まわせてもらうことができたが、これからどうしようか。
「ぽーよ?」
考え込むマホロアにカービィが話しかけた。近くにフーム達はいない。一人で来たのだろうか
「ああ、ごめんヨォ。チョット考えごとしてタんだ」
「ぽーよー?」
よくわからないとばかりに首を傾げるカービィを持ち上げてみた。っキャッキャと楽しそうにしている。やはり、言動が幼い。
「この世界のキミは、ずいぶんと幼いんダネェ」
この世界ではきっと誰にも伝わらない言葉で独り言を呟く。背後からカツ、カツと石畳を歩く音がした。カービィが目を輝かせて手をパタパタと振る。
「めやー、めややいと、めややいと!」
マホロアはカービィを降ろすと笑顔で振り返った。
「ハジメマシテ、確かキミはメタナイト卿ダッケ。ボクに何か用?」
「いいや、特に用はない。ただの挨拶だ。私はメタナイト。陛下の騎士を務めている」
「ソウ、ソレはドーモ。ボクはマホロア。今日からこの城に住まわせてもらう旅商人ダヨォ」
そういうとメタナイト卿の様子を窺った。彼の目は冷たい光を湛えているように見える。表情の読めない彼がマホロアは苦手だった。突然メタナイト卿が、ククッと笑った。
「おっと……失礼したな。なに、そう身構えなくてもいいさ。本当にただ挨拶をしに来ただけだ」
そう言って彼はマントを翻した。
「では私はこれで失礼する。良い夢を」
そう言うとメタナイト卿は去っていった。その背中を見ながらマホロアは思った。やっぱり苦手だなぁ。
「ぽーよ!ぽよよあ!」
カービィはメタナイト卿の背中をキラキラした目で見送ったあと、マホロアを急かすように手を引いた。
「ああ、ゴメンヨォ」
***
歓迎会が終わりフームとブンは自分たちの部屋に戻った。ブンはベッドの上で胡座をかいて話をする。
「デデデを言いくるめて城に住むなんてスゲーよな!」
「ぽよーよよ!」
今日はカービィも城に泊まるのか、フームのベッドの上で楽しそうに飛び跳ねていた。
「ぽーよ、ぽーよ!」
フームがそんなカービィを注意すると、カービィは少ししょんぼりした様子でベッドに座った。
「……でも、マホロアって本当に何者なのかしら?突然、遠くへ飛ばされるような災害なんて聞いたことないわ」
「へー、ねーちゃんでも知らないのか。どんなヤツなんだろ」
ブンはワクワクした様子でそう言った。フームはそんな様子を見て少し呆れながら言う。
「もう!ブンったら……今日はもう遅いわ。明日聞いてみましょう」
「ぽよよー?」
フームの言葉にカービィが反応した。
「そうよー、明日。今日はもう寝ましょう」
「ぽよ!」
フームの言葉にブンとカービィはベッドに潜り込んだ。そして、3人は仲良く眠りについたのだった。
***