人は簡単に死なないらしい。自分に失望するのは常なのだが、またもやドクターは己にがっかりしていた。
体力がないと言われ続けている癖に、そう簡単に死ななかったからだ。
自ら命を断とうとした訳ではない。ただ敵対勢力の奇襲を受けて、作戦中に配置変更を行ったときに気がついてしまった。
敵の狙いは本拠地である、自分のいる場所だ…と。
分かっていたのに、守るオペレーターをあえて配置しなかったのは死を受け入れていると、指摘されても仕方はない。
そして当然のように敵部隊がドクターを襲い、出会い頭に喉元を切り裂かれた。痛みや恐怖よりも、先に来たのは『死ぬかな』という期待だった。
応援に来たオペレーター達の声が、口々に喉から血が大量に出ていると叫んでいる。とうとう怯えたようなアーミヤが自分を呼ぶ声に、これが末期(まつご)なのかと納得してしまった。
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