夕立のワルツ「あー、そういえば。俺カノジョ出来たわ」
カーペットの上に座りベッドに背を凭れる体制で漫画を読んでいた一郎に、何でも無いことのように告げる。
こちらを向いて、え、と呟いて数秒ぽかんとした後、キュッと結ばれた一郎の唇が不満そうに尖っていく。その様を見て左馬刻は、あぁ可愛いなと思った後すぐにいやいやとかぶりを振る。いかんせん顔が可愛いので、仕草の何もかもが可愛く見えて仕方がない。それは昔からだった。
そう、一郎の顔が可愛いせいだ。ついでに三兄弟の一番上の癖に、自分と二人きりの時は年相応なクソガキなもんだからそこも可愛い。ふざけるな。だから自分は悪くないと、左馬刻は誰に言うでもなく内心言い訳のようなことを並べ立てる。
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